マンガ大賞2011ノミネート『失恋ショコラティエ』レビュー

失恋ショコラティエ 3 (フラワーコミックスアルファ)

■あらすじ
製菓学校に通うケーキ屋の息子・小動 爽太(こゆるぎ そうた)。一目惚れして想いつづけた高校の先輩・サエコとつきあうことになり、サエコが何より好きだというチョコレートを心をこめて作り、バレンタインにプレゼント。しかし、チョコを前にしたサエコの口から返ってきたのは、「付き合っている人がいる」という非情な言葉だった。
失意の爽太はフランスへ渡り、パティスリー「ボネ―ル」でショコラティエの修業を始める。
時は流れ、日本へ帰国し、チョコレート専門店「ショコラヴィ」を開店する爽太だが、いまだにその心はサエコのことを追いかけていた。そして、そんな爽太の前にサエコが姿を表して…

■みどころ
「Flowers」で連載中の水城せとなのこちらの作品。タイトルに使われている「ショコラティエ」とは、チョコレートを作る職人のことですが、物語の主人公・爽太がチョコレートを作り出す原動力となったのが「失恋」です。

昔も今も爽太の心の中心にいるのは、憧れの女性・サエコ。残酷な言葉で振られても、彼女に決まった相手がいても、爽太はひたすらサエコを見つめて、サエコを落とすために一流のショコラティエ、そして「悪い男」になるべくまい進中。
その甲斐あって、徐々に駆け引き上手になり、サエコの心を揺さぶる爽太ですが、その一方で、ひたすらサエコとの恋を妄想し続けたり、サエコの誘いに舞い上がるその姿は・・まだまだ恋に不器用な若い男子です。

この物語の登場人物は主人公・爽太を筆頭に皆、かなわぬ恋心を心に抱いています。
爽太に想いを寄せ、サエコの影が見えるたびに心中穏やかでない「ショコラヴィ」の従業員・薫子。

同じく「ショコラヴィ」の従業員で、爽太のフランス時代からの同僚・オリヴィエは友達の恋人とつきあっているという爽太の妹・まつりを心配しながら、次第に彼女に想いを寄せるようになっていく。

PV撮影の場で出会った相手に片想いのまま、爽太と関係を持ち切なさを共有する人気モデル・えれな。

そして、既婚者でありながら、「ショコラヴィ」に頻繁に通い、何かと爽太を惑わすサエコ。彼女の真意は一体…

一見、イケメンのショコラティエが繰り広げる甘い恋模様の物語ですが、
その中に登場人物たちが恋に苦しんだり、屈折したり、不器用で微妙な恋心のリアリティが見事に溶け合っています。
彼らの恋する姿がいわゆる純真無垢ではない。
計算高くしたたかだったり、屈折していたり、みっともなかったり。
非常に微細なそれぞれの想いがきちんと描かれた作品です。

かなわぬ相手に恋するのは、愚かなことかもしれない。
しかし、恋とは所詮そういうもの。
かなわなくとも、相手を追いかけずにいられない。
かなわなくとも、相手の目に自分が映るだけで幸せになる。
それが恋。
誰かを一途に愛したときほど、人は愚かになるのかもしれません。

どんなに愚かでもつらくても、恋はいつでも甘く切ない。
それはまるで、極上のチョコレートのように。

■受賞予測
ずばり、この作品は相当上に行くか下に行くか…のどちらかだと思います。
恋する切なさ、ずるさ、悲しさなどその巧みに描かれた登場人物たちの物語には、単なる「ラブストーリー」を超えたクオリティの高さがあります。
ただ…登場人物の中に、多くの女性読者に確実に嫌われるであろうキャラクターが存在していること。イケメン、ショコラといった女子好みの要素が詰まっているあたりを、男性読者がどう感じるか…というところが気がかりな部分。
なので、その巧みなクオリティが評価され、ぶっちぎりで受賞もしくは上位に食い込むか、もしくは上記の懸念材料から、票が伸びず下位に…のどちらかになるのではないでしょうか。

■作品情報
作者: 水城せとな
出版社: 小学館
掲載誌: 凛花 → flowers
既刊数: 3巻まで(続刊)

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