マンガ大賞2011ノミネート『乙嫁語り』レビュー

乙嫁語り 2巻 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

■あらすじ
19世紀の中央ユーラシア。12歳の少年・カルルクに“妻”として嫁いできたアミルは20歳だった。山むこうの村からやってきたアミルはカルルクたちと少し違った風習をもち、美人で快活、狩りや刺繍も得意という良妻であった。
これはそんなアミルを中心に、年上の妻をもらったカルルク、そして家族たちの日々を描いた物語である。

■みどころ
エンターブレインが2008年に創刊した漫画雑誌「Fellows!」。その創刊号から連載されている看板作品のひとつが本作だ。まだそれほど知名度は高くないかもしれないが、正統派メイド漫画の代表格『エマ』を描いた作者(森薫)の最新作だといえばわかりやすいだろうか。

少年漫画のように「○○を倒す」といった本筋があるわけでもなく、遊牧民であるカルルクたちの生活描写が今のところメインになっている。たまに大小さまざまの事件は起きているが、それも日常を引き立てるスパイスのような扱いだ。

なんといっても本作で忘れてならない見どころは商業デビュー当初から続く、描写の細かさだろう。巻末あとがきによれば、作者はメイドとイギリスにくわえ、学生時代に中央アジア・コーカサス地域にハマりまくったらしい。その頃に得たであろう知識と資料、なにより情熱が『エマ』『乙嫁語り』に存分に活かされている。

とにかく読んでいると、建物の装飾ひとつ、キャラクターが着ている衣服の刺繍ひとつまで“ディテールへのこだわり”が半端じゃない。画力そのものの高さも手伝って、読者は中央ユーラシアの「大気や草の薫り」までリアルさを伴って体感することができる。

これだけ完成度が高ければ、読者としてもいろいろな楽しみ方が可能だ。姐さん女房をもらったカルルク君のドキドキ感を味わうもよし、完璧だけどちょっと天然なアミルさんに萌え萌えするもよし、遊牧民たちの暮らしを紙上体験するだけでも十分おもしろい。

あくせく働いた日の夜、眠る前にフトンの中でページをめくってホンワリなごむ……そんな読み方にもぴったりな逸品だ。

■受賞予測
大賞は十二分に狙えるだろう。昨年の『テルマエ・ロマエ』に続き、エンターブレイン系の二連覇もあり得る。なんとか「受賞できない、上位に入らない可能性」を探そうとしたが浮かばなかった。あとは他のノミネート作品次第だ。

■作品情報
作者: 森薫
出版社: エンターブレイン
掲載誌: fellows!
既刊数: 2巻まで(続刊)

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