マンガ大賞2011ノミネート『進撃の巨人』レビュー

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

■あらすじ
人間を捕食する謎の“巨人”たちがはびこる世界。難を逃れた人類は「壁」を作り、その内側だけで細々と生きながらえていた。だが見せかけの平穏が100年あまり続いたある日――超大型の“巨人”がどこからか出現し、あっさり壁を突破されてしまった。その襲撃時、主人公・エレンは目の前で母親を食い殺されるという悲劇を経験する。
それから数年、兵士として訓練を受けたエレンは逞しく成長。仲間たちとともに決死の反撃を試みるが……?

■みどころ
テレビや雑誌でいち早く注目され、2011年版の「このマンガがすごい!」では堂々の1位を獲得した。メディアミックスもされていない、しかも新人作家の初連載作なのにコミックス2巻の時点で100万部を突破。すでに現在は150万部に達しているという。漫画マニアでなくとも今もっとも注目したい作品といえる。

ひと言で作品テーマをあらわすなら「絶望」だろう。実際、書店のポスターなどでも絶望というキーワードがたびたび登場している。

絶望の度合いは、そこらの少年漫画に類を見ないほど強烈かつ極悪である。なにせ敵は平均3~15メートル、最大50メートルを超える巨人。たとえば自分が生身でガンダムと戦うところを想像してみるといい。サイズ的にはそんな感じだ。

しかも巨人には言葉が通じず、一方的に人間を捕食する。頭部を吹き飛ばされてもすぐ再生するので、原始的な武器で弱点を攻撃するしか対抗策はない。そんなバケモノが倒しても倒してもワラワラ湧いてくる様子は、まさに「どうあがいても絶望」である。

だが、エレンたちはそれでも諦めない。ガス式のワイヤーウィンチ(立体機動装置)で巨人に肉薄し、ブレードで弱点を切り裂く。たとえ傷を負っても仲間を殺されても、最後まで希望を信じて戦う。その姿が読者の共感を呼ぶのだろう。

思うに、これだけ本作が広く受け入れられているのは、今の我々が置かれている状況に似ているからではないだろうか。現実世界に巨人はいないが、先の見えない経済不況、海外からの圧力……“巨人”に該当するものはいくらでもある。だから読者は、圧倒的な絶望と戦い続けるエレンたちに感情移入し、知らず知らず物語に引き込まれてしまうのだ。

主人公より強いバトルヒロイン・ミカサ、気弱だけど頭のまわる友人・アルミン、そして「巨人にまつわる謎」を握っているであろうエレンの父親。配置されたキャクターのバランスも絶妙だ。唯一の欠点は画力がこなれていない点(特に人物)だが、そんなことは時間が解決してくれるはず。本作の評価を下げることにはならない。

昨年末に単行本3巻が発売され、まだまだ怒濤のストーリー展開は続いている。マンガ大賞のノミネートとかを抜きにしても「これは必読っすよ!」と強くオススメしたい会心の一作だ。

■受賞予測
グランプリ候補の一角、少なくともベスト3入りは揺るぎないと思われる。先に述べたとおり、世界観・キャラクター・話題性のどれをとっても穴が見あたらない。

ただ、気がかりなのは作者(諫山創)の「若さ」がどう評価されるかである。マンガ大賞は注目度の決して高くない作品を世に出すことに定評があるが、意外にも歴代の受賞作家は中堅~ベテランに近いキャリアの持ち主ばかり。デビューから3年にも満たない若手作家の受賞歴はないのだ。判断材料に乏しい中、選考委員がどれだけ作者の可能性を信じられるか、そこがポイントになってくると思われる。

もうひとつの気がかりは注目度が急に上昇しすぎた点。つい先ごろ「このマンガがすごい!」で1位になったばかりであり、メディアや店頭での露出が格段に増えた。もし選考委員の多くが「まだ有名になっていないノミネート作を優先しよう」と考えてしまった場合、『進撃の巨人』にポイントが集まらない可能性だってある。

これら数少ないマイナス要因も踏まえつつ、本作がどこまで台風の目となってくれるか。3月の発表を心待ちにしたい。

■作品情報
作者: 諫山創
出版社: 講談社
掲載誌: 別冊少年マガジン
既刊数: 3巻まで(続刊)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。