将棋漫画考察 【最終回】将棋の未来

王狩(1) (イブニングKC)

将棋の未来、それは必ずしも明るいものではないだろう。一番のスポンサーである新聞社からは、いつ縁を切られても不思議ではない。あの小さなスペースに、ウン千万円から億のお金が出ていると知れば、将棋を知らない人なら「なぜ?」と思うはず。かつて名人戦の移籍が問題となったが、現在、将棋がそれほどに有力なコンテンツとは思えない。当事者である棋士達に、将棋界の未来に対する展望があるかと問えば、どんな答えが返ってくるだろうか。スポーツ界が取り組んでいるように、いかに多くのファンを作るかが、その業界の発展にかかっている。しかも単に楽しむだけでなく、将棋に“金”を使ってくれるファンを増やさなくてはいけない。

今年の11月に、中国で開催された第16回アジア競技大会では、チェス、囲碁、中国将棋が種目になった。これらの競技をスポーツとするには、疑問符が付くかもしれない。しかし話題性は十分だったはずだ。将棋界で、棋士達で、これを悔しがった人はどのくらい居ただろうか。漫画の中では、将棋は最高の頭脳ゲームのひとつとして語られている。それは間違っていないだろう。ただし唯一ではない。むしろ魅力的なゲームに押されているのが現状だ。

毎年、賞金獲得額のランキングが発表されているが、トップの羽生名人は億を越える金額を稼いでいる。しかし背景の市場規模を考えれば、過大な金額に思えてしまう。何事も凋落が始まれば早い。将棋界がそうならないよう願うばかりだ。

 

【将棋漫画紹介】

王狩』(連載:講談社「イブニング」連載中、漫画:青木幸子、監修:飯島栄治七段)
特殊な記憶力を持つ少女、久世杏(くぜあん)の活躍を描いた将棋漫画。彼女は6歳で将棋と出会い、現在は奨励会に入会、2級にまで昇級している。 同じ少女のライバルも登場、奨励会員に着目する大人達の思惑も絡んで、将棋だけに集中できない状況が容赦なく続く。その中でどのように戦っていけるか。また四段のプロ棋士に慣れるかが楽しみな一作。

少女の活躍を描いた漫画では、同じ講談社のアフタヌーンで連載されていた『しおんの王』を思い出す。ただこちらは女流棋士の立場から、オリジナルなタイトル戦で男性棋士との対局を描いている。一方、こちらは男女同じ土俵の奨励会、現実世界ではここを通過した女性は居ません。囲碁界と違って、当面出てこないのかなぁと思います。それこそ中国や韓国辺りから、日本の将棋界を目指す女の子が出てくれば可能性はあるかもしれませんが。

365歩のユウキ』(連載:小学館「少年サンデー」、漫画:西条真二、監修:田中寅彦九段)
パワフルな登場人物が印象的な漫画家、西条真二の将棋漫画。女の子キャラの巨乳設定はここでも健在。ただ設定こそ面白かったが、どうにもこなしきれなかったようで、コミックス4巻で打ち切りとなった。

いじめられっこの中学生、紬勇気(つむぎゆうき)が、偶然、学校の将棋部に入ることがきっかけでスタート。もちろん普通の将棋部ではなく、体育会系将棋部と西条漫画らしい設定。ライバルも一筋縄ではいかない人間ばかり。いじめられっ子のため、周囲の先を読む能力が将棋の先を読む能力に繋がるとのこと。無茶苦茶な設定だが、その辺は目をつぶるとしてもライバル達の番外戦術には、何とも言えなくなってしまう。将棋を舞台にした娯楽漫画と思えば納得できるかも。それと少年サンデーでの連載がまずかったかも。青年誌か週刊ゴラク、漫画サンデーくらいであれば、もっと長続きしたかもしれないなぁと。

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