ショートストーリーの醍醐味を満喫『おやすみなさい』

おやすみなさい。 1 (ヤングマガジンコミックス)ふと漫画雑誌をペラペラめくってみると、数年前と比較してある変化に気づいた。私の気づきの内容は4コマ漫画、1話完結のショートストーリーモノの数が減少しているのではないか、ということである。

個人的には毎週続く長編もののなかに、各週で読み切れる短編ものの漫画が載っていることは、雑誌を1つの読み物として見た際、よいスパイスになっていただけに近年のそんな傾向は残念でならない。

『おやすみなさい』は、1997年のデビュー以来ひたすらショートストーリーを描き続けてきた、小田原ドラゴンの代表作の1つである。『チェリーナイツ』『ホスト一番星』といった作者のその他作品に目を向けてみても、作風には明確な共通項がある。それは、主人公がとにかくモテないということだ。いや、モテないというよりはほとんどは童貞を扱うテーマばかりだ。

本作もそんなご多分に漏れず、ミラーボール製造工場に勤務する童貞成人、上野鉄郎が主人公である。“まじめな、妄想記質”な上野は、同僚である春名、友人の辻尾、高橋らとともに童貞だけが参加資格を持つ、「デーテーズ」を結成する。

「デーテーズ」の活動目標は、来たるべき初体験の時に向けて、様々なシミュレーションを行うことだ。もっとも、メンバーの誰かが童貞を卒業のチャンスが到来すると、メンバーは互いに足を引っ張りあう。どこぞのアイドルグループではないが、童貞でなくなった時「ドーテーズ」を脱退しなければいけないという、鉄の結束で結ばれている。

作者は「女の子に自分の描いている漫画を教えられない」と、嘆いていたそうだが、女性読者にとっては確かに理解に苦しむシーンも多いのかもしれない。ただ、どうしても暑苦しさも伴うことも多い「青春モノ」や「童貞モノ」の漫画に飽きを感じている男性諸君にとっては、本作は新境地に映るかもしれない。決して、痛快ではない。だが、短くまとめられた1話読み切りのストーリーはふくみ笑い必至である。

【作品データ】
出版社:講談社
作者:小田原ドラゴン
刊行状況:全8巻(完結)