Wネーム 1 (ヤングジャンプコミックス)

幸せで結われることの意義『Wネーム』

Wネーム 1 (ヤングジャンプコミックス) 【あらすじ】
大手商社に勤める鴨方利一は、2つの顔を併せ持つ。表の顔は、大手企業に務めて、容姿端麗な女性を取っ替え引っ替えするモテモテのエリートサラリーマン。一方裏の顔は、女装癖のある売れっ子少女漫画家。花屋敷雲雀というペンネームで『ラズベリー・ピーチーズ』という漫画を描き人々に夢を与えている。ヒロインである磯辺蓮は、利一の同僚であり、端正な顔立ちと明晰な頭脳が目を引く黒髪の美人OL。しかし一方では、自分のせいで半身不随の大事故に遭った妹である磯辺天の治療費を稼ぐため、夜は女子高生に変装し、一線を越えさせない援助交際を行いながら生活している。ある日満員電車の中で、誤って利一が女子高生に変装した蓮に痴漢をしてしまったことで、交わるはずのなかった2つの顔を持つ2人の運命が交錯し始める……。

【みどころ】
『Wネーム』の最大の魅力は、卓越した画力と、キャラクターの心情がストレートに読者へ伝わりやすい構成力にある。作者である葉月京は、代表作『恋愛ジャンキー』『モートリ 妄想の砦』『CROSS and CRIME』といった恋愛を扱う作風が特徴だが、本作では作者の持つ世界観と重ねて、メリハリのついたストーリーテイラーとしての才能も堪能できる。

特に印象に残っているのが、会社でもファンの多い美女で、本作ヒロインである磯辺蓮。妹である天と瓜二つの容姿を活かし、妹の治療費を稼ぐために、磯辺天として夜な夜な街に繰り出す。蓮が「妹の大怪我」という十字架を背負って生きていく様は、イチ読者として紙面越しに声援を送りたくもなる。天が二物も三物も与えた利一は、女性関係も派手そのものだったが、次第に純情無垢な蓮に惹かれていく様子は、男性読者なら誰もが納得するのではないか。

そして、二転三転した物語がハッピーエンドで結ばれることの意義と安堵感に納得するはずだ。人間は利己的な生活するために、いくつもの顔を持っていくのだろうが、2つの名前を持つ機会はそう得られない。本作が「ダブルフェイス」ではなく、「ダブルネーム」というタイトルになっている点も、作者のこだわりとセンスを感じるポイントである。

 
【作品データ】
・作者:葉月京
・出版社:集英社
・刊行状況:全6巻(完結)

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