るろうに剣心─特筆版─ 上巻 (ジャンプコミックス)

【短期集中】2014年 実写化漫画のヒット予測!――その1 『るろうに剣心』

るろうに剣心─特筆版─ 上巻 (ジャンプコミックス) 舞台は明治初期。不殺(ころさず)の誓いを胸に秘めて弱き人々のために秘技をふるう剣客・緋村剣心を主人公にした人気コミックが原作(作:和月伸宏)。以前からアニメ化やゲーム化は盛んだったが、満を持して2012年に実写映画版が公開され30億円クラスのヒット作になった。そして2014年、その続編として「京都大火編」「伝説の最期編」の2本が公開予定だ。

漫画の実写化といえば悪い意味で“原作改変”が多く、ファンには叩かれやすいものだが、こと『るろうに剣心』に関してその心配は杞憂に終わった。佐藤健さん演じる剣心はイメージを壊すことなく、かなりのレベルで原作を再現。相楽左之助(演:青木崇高)や斎藤一(演:江口洋介)といった面々も設定こそ変わっているが、なかなか濃いキャラクターとして魅せてくれた。

実写化の障壁になると思われていた原作の“超人じみたチャンバラアクション”も、かなりの部分をCGに頼らない生身のアクションで表現に成功。原作ではほとんど見られなかった無刀取り(素手で武器を持った敵を制すること)まで巧みに盛り込まれており、日本の映画でもここまで痛快なアクションシーンがやれるのかと感心させられる。さらに苛烈な戦いになるであろう続編でも同様のアクションが見られると思えば、これだけで映画館へ足を運ぶ理由になるだろう。

続編では原作最凶のライバルだった志々雄真に、あの藤原竜也さんを起用。四乃森蒼紫(演:伊勢谷友介)、神木隆之介(演:神木隆之介)など、今からワクワクさせられる豪華なキャスティングだ。

唯一の不安材料は――あくまで記者の主観であるが――正ヒロイン・神谷薫を担当する武井咲さんの演技だと感じている。感情が伝わってこない棒読みセリフに加え、剣術道場の師範代という原作設定を壊すようなアクション演技(下半身を使わず腕だけで武器を振る典型的な素人剣法)など、せっかく良質なシナリオとチャンバラに没入しかけていたのに、薫の登場シーンで急に現実へ引き戻されたことが何度もあった。他のドラマなどでは演技力を高評価されることも多い武井さんが、なぜ『るろうに』でこういう演じ方になっているかは疑問。とても明るく表情がころころ変わり、向こう見ずだけど一途で健気、そんな薫のキャラクターを実写で再現したいならこういった演技指導にはならないだろうに……。原作ストーリーを再現するならば、2作目、3作目と進むにつれて薫のポジションはどんどん重要性を増してくるはず。こればかりは監督はじめ製作陣にどうにか対処を願いたいと思う。他の部分がなまじ素晴らしいだけに、ここだけが本当に惜しく感じられるのだ。

少し批判も書いたが、1作目の方向性を引き継いで制作されるかぎり、2014年公開の映画2本は安定したヒットを飛ばせるだろう。公式サイドが2作トータルで100億円ヒットを目標に掲げているのも納得できる。ぜひ映画館の巨大スクリーンで、存分に暴れまわる剣心たちを堪能したいものだ。

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