【あらすじ】
こよりは、Twitterでやりとりをしていた女性「ユリカ」に会うために島根県を訪れる。ところが、いざついてみると「ユリカ」の正体が中2の男子・実(みのる)だということが判明。ショックを受けるこよりだったが、実の兄の昭(あき)をはじめとする野々村家の人々との交流の中に、自分の居場所を見出していくのだった・・・
【みどころ】
日本におけるオンラインでのコミュニケーションの普及率は、ここ数年で加速化した感があります。2011年に起きた東日本大震災の際、電話がつながらない非常事態の中で、情報を得るために人々が頼ったのはつぶやきのサービス、Twitterでした。もちろん、多くの嘘やデマも飛び交いましたが、それでも、情報伝達としてオンラインのつながりが活用できることが、あのときに日本では大きく認知されました。
『ナビガトリア』のプロローグは、そのような世相を象徴する興味深いプロローグから始まっています。こよりが島根を訪れたきっかけはTwitterでで親しくなった女性。しかし、その正体は男子中学生でした。インターネットで性別やプロフィールを偽るという行為は、今日のネット社会で決して珍しくはなく、こよりがショックを受けたこのような出来事は、今の日本のどこかで、起こっていてもおかしくはないのではないでしょうか。
インターネットは、その気になれば偽りを簡単に作り出せる場所であり、コミュニケーションには、リスクがつきものです。しかし、一方、ネットを通じて出会った男女が結婚するケースも珍しくはなくなり、オンラインでのつながりから新しい世界が広がる希望もまた間違いなく存在しています。
「ナビガトリア(Navigatoria)」とは、旅人たちに道を示す星、北極星を意味する言葉です。主人公・こよりは、思わぬ出会いから、島根の土地に自身の指針を見つけました。これから先もこよりが自身の北極星を見失わずに生きていけるのか? 島根の人々の物語はまだ始まったばかりです。
【作品データ】
・作者:アサダニッキ
・出版社:講談社
・刊行状況:1巻(続刊)