ゴリラーマン 新世紀リマスター コミック 全19巻 完結セット (ヤングマガジンコミックス)

一言の重み。シュールな笑いを誘う、ゴリラーマンという男

ゴリラーマン 新世紀リマスター(1) (ヤンマガKCスペシャル)とんねるずの石橋貴明が、「『ゴリラーマン』を読むとゴリラーマンと一緒に屋上でタバコ吸いたくなる」と本作『ゴリラーマン』を絶賛していたことを、ふと思い出した。
主人公の池戸定治(通称・ゴリラーマン)は、端的に言うと外見がゴリラに似ている(自身では鹿賀丈史と思っている)。どこにでもいる普通の高校生ではなく、好きなタバコはリベラ、好きな飲物はカロリーメイトのミルク味、空手は緑帯で、オシャレなスポーツ以外は何でもこなす、違いがわかる粋な男だ。そんなゴリラーマンこと池戸定治の白武高校での日常を、不良グループのリーダー藤本修二と藤本軍団、ヒロインの北村香織、全員顔が同じのゴリラーマンファミリーと個性的なキャラクター達が脇を固める。ふくみ笑い必至の青春ストーリーだ。

ゴリラーマンはクールな男だ。そのクールさは、作中で一言しか話さなかったことからも伺い知れる。だが、その表情、行動、この男どこか憎めない。
作者のハロルド作石は、『バカイチ』『ストッパー毒島』『BECK』など数々のヒット作品を発表している人気作家。プロ野球、プロレス、三国志、音楽を随所に小ネタに出すスタイルは、初の長編作品となった『ゴリラーマン』でも垣間見える。第14回講談社漫画賞を受賞した出世作である本作は、高校生の日常を独特なユーモアセンスで切り取っている。
ゴリラーマンは、喧嘩が強い。10人がかりでもゴリラーマンを倒せる人間はいない。その強さと、ふてぶてしい態度から転校する学校でことごとく恐れられ、退学を繰り返してきた恐ろしい男だ。白武高校転向後、ゴリラ顔ということと、自己主張がないため、仲間たちはゴリラーマンの恐ろしさに気づいていなかった。ゴリラーマンの恐ろしさに皆が気づくのは、最強の不良高校、堂上商業の片桐純哉を倒した時だが、この時既に最終話から数えて5話程度前であった。
最終話で、やはりというか、またまた転校することになったゴリラーマン。工事中の鉄が空から、ゴリラーマンの頭に落下する。普通の人間なら確実に死んでいる。ピンピンしていたゴリラーマンに、藤本や仲間たちが、ふざけて殴る蹴るでじゃれあう。動かなくなったゴリラーマンに、ヒロインの香織ちゃんが意識確認で、強く体を揺らす。ゴリラーマンは一言。「痛いよ、香織ちゃん」
ゴリラーマンの勇姿は、OVAやゲームでも楽しめる。勇姿と言えるかは定かでないが。高校時代の思いだして見たくなった時、会社をサボって漫画喫茶でタバコを吸っている時、『ゴリラーマン』を読み返してみたい。

【作品データ】
作者:ハロルド作石
出版社:講談社
刊行状況:全19巻(完結)※文庫版全12巻

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