将棋漫画考察 【第5回】プロとアマの差

将棋に限らず、いろいろな競技でプロとアマの差が語られることがある。もちろんプロとアマの規定や境界は競技によって様々であり、アマがプロに勝ってしまうことも少なくない。ゴルフで活躍している石川遼選手や宮里藍選手も、トーナメントの初勝利はアマチュア(しかも高校生)だった。また先ごろ各県代表が決定したサッカー天皇杯でも、学生チームや下位リーグのチームがJ1・J2のチームに勝利してしまうこともある。

さて将棋ではどうだろうか。有名なところでは最初にアマに大きく門戸を開いた竜王戦がある。竜王戦では、アマ竜王戦の上位入賞者らがプロに混じって戦う。年によって結果に違いはあるものの、勝率は概ね3割程度。またアマからプロ入りを果たした瀬川晶司氏が活躍した銀河戦もある。瀬川氏の活躍がずば抜けているものの、全体の勝率はもう少し良い程度のようだ。ではトップ同士の対局ではどうなるだろう。例えば羽生名人や渡辺竜王などトッププロ10人とトップアマ10人が総当りの対抗戦を行ったとしよう。プロ側が全勝できるかと言えば難しそうだ。条件にもよるが、アマ側も1割(100局中10局)程度は、勝てるのではないだろうか。しかし結果として、プロ側の圧倒的勝利に終わることは想像に難くない。

ふらりと登場した主人公が、プロをなぎ倒していく漫画のストーリーが少なからずある。しかし現実の世界でそれを実現するには、なかなかに難しそうだ。波乱万丈の展開は、漫画の中だけなのかもしれない。

【将棋漫画紹介】

『聖-天才・羽生が恐れた男』(連載:小学館「ビックコミックス」、漫画:山本おさむ、監修:森信雄)
29歳、A級八段で夭折した棋士、村山聖(むらやま さとし)の人生を漫画化したもの。大崎善生の小説『聖の青春』が下敷きになっているが、漫画なりの脚色や演出も多く、忠実な漫画化とは言いづらい。しかしその迫力は将棋ファンならずとも一読の価値があるだろう。

若くして亡くなると、その才能や将来性を惜しまれることが少なからずあるが、村山聖はまさにその典型。‘終盤は村山に聞け’など、プロ棋士間でも高評価の実力を持っていた。そして病弱で結果を残せないのも惜しまれた。監修者で師匠でもあるプロ棋士の森信雄七段の交流の場面では、今は希薄になりつつある師弟関係の強さを存分に感じることができるはず。まさに将棋に人生をかけたと言っても良い人間の生き様が描かれている。

 

『指して刺す』(竹書房バンブーコミックス、漫画:神田たけ志、原作:来賀友志、協力:先崎学)
神田たけ志、来賀友志、そして竹書房と聞けば、誰しも麻雀漫画を思い出すに違いないだろう。ところがこれは将棋漫画。多分に実験的なものもあったのではないだろうか。そして考察で書いたように、主人公が強豪アマ棋士やプロ棋士をなぎ倒していくストーリー。ただし内容は盛り込み過ぎの感がある。

主人公の設定が、1:親が賭け将棋指しで行方不明、2:師匠がかつての実力者、3:中国将棋の修行、4:将棋好きな少年との関わり、とてんこ盛り。しかもコミックス1巻分で強引に終了させたため、消化不良で尻切れトンボになっている。また将棋の内容が、かなり詳細で有段者でないと理解しにくい場面もあり、全体的に暗い展開が続く。もう少し整理して、スカッとできるシーンを増やしても良かったのではないだろうか。同じ神田と来賀のコンビで、奨励会員を描いた『投了すっか』もある。こちらも漫画的には盛り上がりに欠ける出来ばえ。

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