1/2の林檎(14) (講談社コミックスキス)

運命を信じる聖女と大胆不敵な悪女の対決ドラマ…!『1/2の林檎』

1/2の林檎(14) (講談社コミックスキス) 【あらすじ】
製薬会社に勤める谷村ひかるは「運命の相手に出逢いたい」と夢見るOL。ある日、研修にやってきた男性社員。それは、ひかるが学生時代に憧れていたバレー部の先輩・新堂だった。
再会を機に恋に落ちていくひかると新堂。だが、ひかるの同僚の美女・奈津子はひかるの幸せを妬み、新堂をひかるから奪い取ろうとして……

【見どころ】
「悪女(あくじょ)」という言葉が知られるようになったのは、歌手の中島みゆきのヒット曲のタイトルに使われたあたりからでしょうか。男性を惑わせ、平気な顔で人を裏切る、世にいう「悪女」と呼ばれる女性の行動は、男性よりもはるかに残酷で容赦ないときがあります。日本の歴史においても、豊臣秀吉の寵愛を受けて権力を手にした淀君などが悪女として知られていますね。

さて、漫画の世界における「悪女」というと、『ルパン三世』の峰不二子などが有名ですが、この『1/2の林檎』のまた、悪女が際立つ物語。
この作品を何よりも盛り上げているのは、ひかるの敵役である悪女・奈津子です。

アル中の母親を抱え、不幸な生い立ちを持つ奈津子は、「人の男をとるのが趣味」ともささやかれるいわくつきの女性ですが、運命の相手を信じて、愛する人と幸せになっていくひかるが気に入らず、彼女が恋する新堂を奪おうとたくらみます。
そして、奈津子は、新堂の仕事を成功させるために、自ら交通事故を起こし、足を負傷するという捨て身の行動に出て、新堂を略奪し、彼と結婚してしまうのです。

新堂の妻となった後も、奈津子は夫の近くに見え隠れするひかるが許せませんでした。自らの妊娠が勘違いだと判明すると、流産をでっちあげ、その原因を作ったのがひかるであるかのように装うなど、奈津子はひかるを苦しめ続けます。

作品の連載中、多くの読者から嫌われていたにちがいない奈津子。しかし、彼女のなりふりかまわず悪事を重ねていく姿こそが、この作品の何よりの面白さでもありました。

歴史、漫画や映画の世界に存在する奈津子のような悪女たちは、大胆不敵な行動で見る者を挑発し、注目をひきつけてやまない存在です。憎まれながらも魅了する。それこそが、男性にはない女性たる「悪」のありようなのかもしれませんね。

すでに完結しているこの作品は、運命の相手を探すひかるの恋物語であると同時に、ひかると奈津子という二人の女性の戦いのストーリーでもあります。

運命を信じるひたむきな聖女と幸せを奪う大胆不敵な悪女。彼女たちの戦いには、どんな決着がつくのか。

ひかると奈津子。この作品は、人の愛し方も幸せの見つけ方も違う二人の女性の生きざまのドラマなのです。

【作品データ】
作者:こやまゆかり
出版社:講談社
刊行状況:全14巻(完結)

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