次期NHKの大河ドラマに平清盛が登場する。これは1972年の『新・平家物語』から40年を経ての主役再登板だ。一般的に平清盛や平氏のイメージは良くない。勝者であり、鎌倉幕府を開いた源氏に優位性があり、悲劇のスーパーヒーロー、源義経の存在も大きい。これは漫画でも変わりなく、義経を主人公とする漫画は多いものの、平清盛どころか平家側を主役に描かれた漫画はほとんどない。
しかし近年、従来のイメージを覆すような歴史の研究や発表がなされている。ヒーローのイメージを持たれていた人物がそれほどでもなかったり、悪役の印象が強い人間が実は全く違っていたりというように。蘇我一族、道鏡、徳川綱吉、吉良上野介、田沼意次など、かつての悪名が少しずつ払拭されてきている。今回、大河ドラマとなることで、平清盛に注目が集まり、従来とは異なるキャラクターで漫画化される可能性もありそうだ。
ところで現在も、少ないながら平清盛の登場する漫画がある。今回はその中からいくつか取り上げてみたい。
■『火の鳥 乱世編』手塚治虫
ご存知、手塚御大の作品。もちろん長編だが、ここの部分だけならコミックスでは2巻分なので、読みやすいはず。登場する平清盛は、ほぼ従来のイメージ通りながら、平家の長として一族を叱責する場面や、すがるもののない孤独な面も持っている。基本的な主人公は木こりの弁太(弁慶のモチーフ扱い)であり、義経すらも欲望のままに生きる無法者として描いている。結局、清盛も義経も願い叶わず死んでしまうが、そこで生まれ変わったのが……、この辺りはコミックスを読んで欲しい。
■『燁輝妃』市川ジュン
女性を主人公にした歴史漫画を数多く描かれている市川ジュン氏の作品。後白河法皇の寵愛を得た高階栄子(丹後局)を描いている。美貌であったことや政治に口出ししたことから唐の楊貴妃を類推、題名の「燁輝妃」もこれからの当て字らしい。彼女や後白河法皇がメインに描かれているため、平清盛どころか源平共に脇役で、キャラクターも既存のイメージとは大差ない。しかし朝廷の側から歴史の推移を見るには面白い作品。また源頼朝の妻、北条政子を描いた『華の王』もある。平清盛の出番は更に少ないが、こちらも時代の流れを理解するにはお勧めの作品。
■『遮那王義経』沢田ひろふみ
講談社、月刊少年マガジンで連載中。源義経は16歳で死亡。その後の活躍は身代わりのものだったというストーリー。平清盛は、わがままな人間として描かれているが、話が進むにつれて次第に変化。死期に臨んでは、位人臣を極めながらも、民を思う気持ちを忘れない為政者の面が色濃く出ている。それを知った身代わりの義経も、今後の行動に大きな影響を受けていくらしい。連載は源平の戦いが佳境に入っているところ。歴史的事実を動かすのは難しいが、その中でどんな展開を見せるか楽しみ。
【関連URL】
・NHKドラマトピックスブログ「大河ドラマ」
http://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/2000/55763.html?from=tp_ao01