さて、「まんがの国のアリスたち」第3回目です。今回、ご紹介するのは『BELIEVE』(槇村さとる)。
もともとは「Young You」(集英社)に連載されていましたが、同誌休刊後は同じ集英社の「You」へ移動。
すでにコミックス全7巻(クイーンズコミックス)完結済みの作品です。
【作品紹介】
芸能事務所の敏腕マネージャー・山口依子は、看板スターの仁村東洋を他事務所に引き抜かれ危機に陥っていたときに、偶然キャバクラで美少女・ルカに出会う。
ルカの不思議な魅力に惹かれた山口は、ルカをスカウト。デビューしてすぐにその輝きが注目されるルカだったが…
【みどころ】
芸能界は今も昔も多くの女性が憧れてやまない世界。
誰もがうらやむスターへの道を歩き始めたルカですが、
彼女が仕事を始めたのは、スターになりたいからではなく、家族を養うためのお金が欲しいから。
そして……たぶん誰かに必要とされたいから。
芸能界は、一見華やかで楽しい場所。しかし、その実、「不思議の国のアリス」のワンダーランドのごとく、簡単に誰かが傷つき、誰かの首が切られるシニカルな場所。
ルカはまさにこの場所を迷いながら生きるアリス。
彼女が探しているのは、お金と自分を必要としてくれる人、そして深い愛情。
様々な欲望やプライドや駆け引きが飛び交うこの場所をルカは求められるままに仕事に応じながら、その美しさとしなやかさで渡っていきます。
しかし、親に捨てられ、結婚相手と死に別れ、はかりしれない孤独と傷を胸に抱いているルカの人との交わり方は、どこか歪んでしまっている。
愛情に誰よりも飢えているのに、マネージャーの山口をはじめとする彼女を心の底から心配する人たちの愛情をよそにして、自分を傷つけるような行動をルカは繰り返すのです。
そして、皮肉なことにルカは、芸能界に入ったために、自身の出生に大きく関わる人物と出会うことになります。
その人物とは…ルカの実の母親。ルカの心の傷のカギを握り、彼女が対決しなくてはいけないハートの女王ともいうべき人物。
芸能界という不思議の国をさまようルカがたどりつく場所ははたしてどこなのか…?
90年代以降、少女誌から女性誌へと活動の場を移し、大人の女性の人格形成や自分と向き合うことをテーマにした物語を多数描いている槇村さとるですが、『BELIEVE』は、芸能界を舞台にしているという設定もあってか、華やかでドラマチック。
比較的娯楽性の高い作品となっています。
あやうく、でもしなやかなルカの生きざま、見守ってみませんか?
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