マンガ大賞2010 第2位『宇宙兄弟』レビュー

3月17日に結果発表された「マンガ大賞2010」において、前年に引き続き『宇宙兄弟』が2位となった。大賞『テルマエ・ロマエ』には僅差で及ばなかったが、上位に本作が入るだろうと予想した人は多く、下馬評通りの強さを見せた。

宇宙兄弟(9) (モーニングKC)

物語の舞台は2025年。主人公は子供の頃に「宇宙へ行こう」と誓った兄弟。兄(六太)は、職場のトラブルでリストラされ三十代にして無職に。いっぽうの弟(日々人)は、厳しい選抜試験をクリアしてNASAで宇宙飛行士訓練に励んでいた。再就職もままならず失意の六太だったが、ひょんなきっかけから弟との“約束”を思い出し、再び宇宙飛行士の夢に挑む――というのがストーリーだ。

作者は小山宙哉。講談社のモーニングに連載され、現在コミックスが8巻まで出ている。

実際にNASAやJAXAへ詳しく取材を行ない、緻密に描き込まれた選抜試験・機材などのリアルさは圧巻。また、メイン主人公の六太が夢を取り戻す過程、彼をとりまく人々との交流シーンなども丁寧に描写されている。宇宙飛行士という壮大なスケールの話だが、モジャモジャ頭に小市民の心をもつ六太のキャラクター性によって感情移入もやりやすい。

なにげない会話が後からじわりと心に染みてきたり、老若男女をとわず“読ませる漫画”という意味では近年でもトップクラスの評価を受けている作品だと言えるだろう。

惜しくも大賞こそ逃したが、漫画のプロフェッショナルたちが選ぶ同賞において2年連続ノミネート・2年連続ベスト3入りは初の快挙。『このマンガがすごい!2009』でも第2位(オトコ編)に輝き、そのポテンシャルの高さを見せつけた。

まだメディア化こそされていないが、多くの書店では単行本が平積みにされており、マンガ大賞2010の結果をうけて今後いっそう注目度は上がっていくだろう。チェックしておいて損はない話題作だ。