オーク国王の正体は?『オルクセン王国史』

今回は『オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~』(原作:樽見京一郎、作画:野上武志)を紹介します。

インターネット漫画サイト「NOVA(ノヴァ)」で連載中の本作。元々は2021年からインターネット小説投稿サイト「小説家になろう」と「カクヨム」にて連載していた同名小説が原作。2024年からメディアミックスとして漫画化されています。

主人公はオークのグスタフ・ファルケンハイン。オークを始めコボルト、ドワーフなど異種族によって構成されるオルクセン王国の国王。彼がエルフィンド国から逃れたディネルースと出会うことで大きく話が展開します。もう1人の主人公と言うべき存在がディネルース・アンダリエル。彼女はダークエルフ族の女性であり、彼女らダークエルフ達が襲われたことが話の発端となっています。後にグスタフとムニャムニャの関係になるのですが、その辺りは本編をどうぞ。そしてモデルとなった舞台は1900年頃のヨーロッパ。ただし蒸気機関車や懐中時計など発達した近代文明とともに、魔法や前述したような異種族が存在する世の中となっています。また地理関係についても厳密にはずれがあります。

エルフらの国であるエルフィンドとオルクセン王国には、かつて戦争すら行った浅からぬ因縁があるのですが、そこへ白エルフらによって迫害されたダークエルフらが亡命したことで、大きく事態が動きます。ダークエルフらを受け入れたオルクセン王国は大きく情報面や戦力面、さらには戦術面で有利に立つとともに、エルフィンドは大きく戦力を減退させています。ただし、エルフィンド自体がそれに気づいてないのは滑稽なんですよね。ある種の選民思想なのかもしれません。

選民主義を貫くエルフィンドに対して、ありとあらゆる人や物を活用して国力を高めるオルクセン王国。副題の「野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか」を見れば、本作の結末がどのようなものになるかは明白。そこへと至る光景を着実に積み重ねていきます。戦争が表舞台とすれば、その土台となる情報収集、生産力強化、兵站増強は目立たない存在です。しかし本作では、それらも綿密に描いています。

さて、オルクセン王国のグスタフ国王ですが、ストーリーが展開する中で意外な事実が明らかになります。ここで明かすのは避けますが、ヒントを出すとすれば、原作小説の掲載が「小説家になろう」と「カクヨム」だということでしょうか。これだけでピンと来た人は、なかなか鋭いと思います。この設定に関しては、「なるほど」と思う面もあれば、「そこまでするか」と思う面も。人によっても好みが分かれるかもしれません。


戦争への準備が着々と進むかと思われた中で、意外なことがきっかけとなりいきなり戦火が灯ります。直近の連載では、戦火が拡大する中でエルフィンドの被害は甚大。オルクセン側も小さくない被害を受けています。まあ、圧倒的に有利であっても戦争であれば死者が出るのは仕方のないことですね。さらに迫害されたダークエルフらが白エルフらに受けた悲惨な状況も明らかになってきました。この辺りに、どのような決着をつけるのか。戦争は始めるのは簡単ですが、終わらせるのは難しい。現実のロシアのウクライナ侵攻や、アメリカのイラン爆撃を見ても分るでしょう。グスタフ国王の決断を期待しましょう。

【作品データ】
原作:樽見京一郎
作画:野上武志
連載:一二三書房漫画サイト「NOVA(ノヴァ)」連載中
刊行状況:1~6巻発売中、以下続刊