泥の固まりは浮かぶのか?『コンクリートの船』

今回は小学館「ビッグコミックオリジナル」で連載中の『コンクリートの船』(村上たかし)を紹介します。

飛行機や船舶のことを「鉄の塊が空を飛ぶ」「鉄の塊が水に浮かぶ」なんて表現することがあります。では泥の固まりは水に浮くのでしょうか。この漫画は昭和初期に実在した土木会社「武智工務所」と、そこで働く人々をモデルにした作品です。「武智工務所」ならぬ「武田工務店」の社長である武田宗次郎が本作の主人公。彼が大型工事の入札に漏れ、海外進出もとん挫したところから話が始まります。次に舞い込んだ東京オリンピックも戦争の影響で中止。そこにコンクリートで船を建造する話が舞い込んだことから、大きく物語が展開していきます。

このコンクリートの船。作中でもちょっと描かれているように、アメリカなどでも試作されていたそうです。ただし、結局は鉄船や鉄鋼船が普及したことで、実用化には至りませんでした。しかし第二次世界大戦の末期に資源が窮乏した日本海軍が目を付けたことで、コンクリート技術に定評のある「武田工務店」にお鉢が回ってきます。

「コンクリートの船が本当に浮かぶのか?」と思ってしまいますが、優秀な海軍の技術者やコンクリートの専門家。そして武田工務店の宗次郎社長や従業員のがんばりで成功しちゃうんですね。だからこそ漫画になったのでしょう。

ただし成功したところで終わらないのが漫画です。ご存じの通り、日本は第二次世界大戦で大敗します。そんな中で建造されたコンクリート船にも出番が回ってきます。直近の連載では、同行した鉄鋼船がアメリカ軍の潜水艦に沈められてしまった一方、コンクリート船はその遅さと静かさゆえに、潜水艦に気づかれずに難を逃れます。まさに何が幸いするか分かりません。この後、コンクリート船がどんな運命を辿るのか。武田工務店の宗次郎社長や従業員らがどうなってしまうのか。興味を持って連載を追いかけたいと思います。

なお、第一話で少し触れられているコンクリート船の現在ですが、安浦町まちづくり協議会ホームページで詳しく紹介されています。ある意味ではネタバレになってしまいますが、こちらのホームページを読んでから漫画を見るのも一興でしょう。

【作品データ】
作者:村上たかし
連載:小学館「ビッグコミックオリジナル」連載中
刊行状況:1巻発売中、以下続刊