藤田和日郎流のなろうワールド開幕「シルバーマウンテン」

小学館「週刊少年サンデー」にて好評連載中の『シルバーマウンテン』を紹介します。

現代日本で老境にさしかかったおっさんが、何かの弾みで異世界に飛ばされ、襲い掛かる脅威と戦いを繰り広げる。そう聞くと「ああ“なろう”ね」と思うかもしれません。でも『うしおととら』『からくりサーカス』などの代表作がある藤田和日郎先生の手にかかると、一風変わった作品に仕上がります。

主人公はなんと85歳の拝郷銀兵衛(はいごう ぎんべえ)。『シノビノ』(大柿ロクロウ)の主人公である沢村甚三郎保祐の年齢が72歳で「年寄りだ!」と思っていたのですが、それを超える年齢の主人公でした。あ、エルフのフリーレンとかは別ですよ。年金生活でもおかしくない年齢なのですが、整体治療院を経営しつつ、若い格闘家なども手玉に取る活躍を見せています。

彼のライバル的な立ち位置となっている佐伯兵頭(さえき ひょうどう)と共に、仙境と呼ぶ世界に飛ばされたところから話が始まります。その仙境の中央にある銀色の山、つまりシルバーマウンテンの頂上に登ることができれば現実世界に戻れるらしいのですが、さてどうなるか…ってところです。

ここで問題になるのが銀兵衛と兵頭の年齢です。天狗(かな?)に年齢の大半を奪われた?ことで、銀兵衛と兵頭は知識や記憶、武道の力量はそのままに10歳くらいの子供になってしまいます。
そう聞くと「ああ“なろう”ね」と思うかもしれませんが、以下同文です。

最初は戸惑っていた銀兵衛と兵頭ですが、異世界の女性-現状のヒロイン-であるサイッダに出会い、ドラゴンのような巨大生物であるディグニスを助けたことで、多少なりとも異世界の状況が分かるようになってきました。その結果、「夢だろ」と思い込もうとしていたところから、現実世界に戻るための努力を試みるようになっていきます。

直近の連載ではサイッダを手助けしつつ、魔導士として炎を自在に使うトロムのジョフリドと戦うことになります。まさに悪人のようなジョフリドなのですが、かつて子供だったサイッダを人買いに売り飛ばした過去もあり、二重の敵として銀兵衛は対峙していきます。まあ、勝つでしょうけどね。

さて単なるなろう系と思えないのが、時々、江戸時代の国学者である平田篤胤(ひらた あつたね)が登場すること。舞台は明らかに江戸時代で銀兵衛は寅吉と呼ばれているのですが、この寅吉がどのような立ち位置にいるのかが、今のところはっきりしません。現代、江戸時代、異世界の3つを舞台にするのか。それとも江戸時代の寅吉は単なる語り部に過ぎないのか。それでは銀兵衛と兵頭は現代に戻ることができないのか。いろいろと謎が深そうなのですが、とりあえずはサイッダの脚線美とともに先行きを楽しみに見守りましょう。

【作品データ】
作者:藤田和日郎
連載:小学館「週刊少年サンデー」連載中
刊行状況:1巻発売中、以下続刊