複雑怪奇な友情関係は成立するのか?『みいちゃんと山田さん』

男性向けあるいは女性向けの風俗店は、日本各地にたくさんあります。特に、有名なのは新宿・歌舞伎町です。健全に運営されているところもあれば、どこか怪しいとところもたくさんあります。

その風俗店で働く女性に焦点を当てた作品が、亜月ねね先生の『みいちゃんと山田さん』です。刺激的なシーンが含まれている箇所もあるので、読む際は十分に気をつけて読んでください。

【作品紹介】

舞台は、2012年の新宿・歌舞伎町。その夜の街でキャバクラ嬢として働く、山田さんが主人公です。

彼女は大学に籍を置きながら、生活のためにキャバクラ嬢をしています。そのため、あまりやる気はなく、客に営業メールを送らずに小説を読んでいる始末。

そのお店で出会ったのが、みいちゃんこと中村実衣子という女性。21歳の実年齢より若く見える彼女は、中卒で漢字を読めないばかりか、自分や同僚、お客さんの個人情報にも無頓着と社会常識のない、「可哀想」と思われている子でした。

そんなみいちゃんと山田さんをめぐる物語です。

【作品の見どころ】

本作の見どころは、みいちゃんと山田さんの複雑ながら奇妙な友情関係にあります。

みいちゃんは、社会のルールを理解できず、突飛に見える行動を取ってしまい、いつも周りに迷惑をかけてしまう女性です。

一方の山田さんは、過去に毒親の言動で傷ついた過去があり、どうしても心が重くなりがちでした。

そんなふたりが自分の夢を見つめ直し、友人として深く関わるようになっていく過程を丁寧に描いています。

結末はどうしても重たくなってしまうのですが、少しでもみいちゃんを救おうとする気持ちを持つ人物が描かれており、人間の持つ本来の優しさに気づいてもらいたい作品です。

【作品データ】
・作者:亜月ねね
・出版社:講談社(マガジンポケット)
※「マガジンポケット」でも読めます
・刊行状況:既刊4巻