自由恋愛が多くなり、お見合い結婚はここ30年で1割を切った現代の日本社会。しかし、大正時代の日本は、お見合い結婚が主流だったことはあまり知られていません。また、明治時代までは、家制度のもと親が結婚相手を決めるのが一般的でした。
結婚の自由化が進みつつあった大正時代の結婚事情。筆者自身も興味があるところです。その結婚事情をテーマにした作品として、今回は粥川すず先生の『大正學生愛妻家』を紹介します。
【作品紹介】
大正10年頃、まだ東京都東京市だった日本が作品の舞台。士族の橘家へ奉公して、お屋敷の女中として働いていた24歳のふきという女性が物語の主人公です。
ふきは尋常小学校を卒業して、すぐに橘家へ奉公に出され、かれこれ12年働いています。
そんな折、本家へ養子に出されていた勇吾が、帝国第一高校へ進学するため、東京の自宅へと帰郷することになり再会。
17歳になった勇吾は「嫁探し」を命じられており、婚約が破談となっていたふきは、勇吾からの球根を受けてしまいます。
時は、まだ結婚するために親の許しが必要だった時代にあった、健気な女中・ふきとエリート学生・勇吾の身分差と年の差ありの新婚生活を描いた作品です。
六年ぶりに再会した坊ちゃんに、プロポーズされる話
(0/14)#漫画が読めるハッシュタグ pic.twitter.com/6LWH50t4Py— 粥川すず (@sazamegoto) November 21, 2024
https://platform.twitter.com/widgets.js
【作品の見どころ】
本作の見どころは、身分差と年の差によって生まれるピュアな恋愛にあります。
家制度があった当時、エリート学生と女中といえば、身分差も相当大きいものがあったはずです。
少しずつ自由恋愛も増えていたとはいえ、女中に本家のお坊ちゃんが求婚するというのは、かなりの困難を伴うのは想像に難くありません。
その中で、健気に働くふき、ふきを気遣う勇吾、お互いがお互いを思い合う姿は、それだけで尊いと感じる人も少なくないでしょう。
また、作者の粥川すず先生は繊細なタッチの絵に定評があり、大正時代の世界観を美しく描いており、私たちを令和から大正へといざなってくれます。
【作品データ】
作者:粥川すず
出版社:講談社(モーニング・ツー)
※コミックDAYSにて試し読みできます
刊行状況:既刊3巻
