「恋愛伴侶規範」という言葉をご存知でしょうか。これは、世間一般にある「誰もがいずれ他者と恋愛関係を築くべきであり、そうしなければならない」という社会的な価値観やプレッシャーを指します。
いわゆるマイノリティーの人たちは、そのような価値観・圧力に日々悩まされているわけです。これをテーマにした作品として、今回はトイ・ヨウ先生の『多聞さんのおかしなともだち』を紹介します。
【作品紹介】
主人公はクィア(多様な性自認・性的指向を持つ人の総称)な家庭で育ち、誰を好きになっても祝ってもらえる環境であるにもかかわらず、誰も恋愛対象にならない(アセクシャルな)ことに悩む内日(うつい)さんです。
もうひとり、物語の鍵を握る女性が、多聞という女性。サングラスをかけた彼女は、いつも他人には見えない人ならざるもの(紙と置物)との会話を愉しむ、風変わりな大人です。
主人公の内日さんは、この多聞にもっとも懐いています。
そして、内日さんの呼びかけに応えて現れた、多聞の友達。彼らは、自分の名前を忘れてしまった不思議な仔たちで……。
「わたし達」を見つけるためにはじまった、大阪の夏を描いた物語です。
『多聞さんのおかしなともだち』上下巻6/12同時発売します
レズビアンの母達と育った主人公内日さんが誰のことを愛してもいいと教わった自分がなぜ誰のことも恋愛として愛することができないんだろうと悩んだり、その悩みをわかりあえなくても誰かと話したいと願う様子を描きました
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【作品の見どころ】
本作の見どころは、内日さんと彼女の呼びかけに応じて出てきた変幻自在な不思議な仔、多聞の友達とのやり取りにあります。
その友達は、三人だったり四人だったりとさまざまです。レズビアンもいれば、ゲイ、ノンバイナリーなどセクシャル・マイノリティ同士の恋人・家族などがたくさん登場してきます。
特に印象的な場面が、内日が以前少しだけ付き合っていた女性「ユナ(윤아)」と出会ったときのことを、多聞の友達に話す場面(episode7)です。
ユナは近況報告や、高校生当時に内日やその家族に対して感じていたことを話します。対する内日は、なかなかその思いを話せません。
そのことを暗闇で花火をしながら話す内日なのですが、暗闇で花火をしたときのイメージを喚起できるように描かれています。
その後は、多聞の友達の過去を垣間見たり、さまざまな人に変化する多聞の友達と砂浜で対話するなどの過程を経て、内日は過去の自分と対話。
その時に、多聞の友達がかけた言葉が、セクシャル・マイノリティの気持ちを代弁していることに好感を持ちました。
アセクシャルの方はもちろん、それ以外のセクシャル・マイノリティの方、そうでない方にも手に取ってもらいたい作品です。
【作品データ】
・作画:トイ・ヨウ
・出版社:KADOKAWA(BEAM COMIX)
※カドコミで、試し読みできます
・刊行状況:全2巻(上・下巻)
