一冊の本からはじまった「エス」の物語『拝啓、在りし日に咲く花たちへ』

ガールズラブをあらわす「百合」。その中に「エス」というものがあります。大正時代に女学生の間で流行った言葉で、年上と年下の姉妹関係をさす言葉です。現代の作品でいうと『マリア様がみてる』が近いでしょうか。

実際にそんな結びつきの強い恋愛ができたとしたら、胸キュンどころでは済まないかもしれません。そのような恋愛を描いた作品が、五十嵐純先生の『拝啓、在りし日に咲く花たちへ』です。

【作品紹介】

主人公は、お嬢様学校に入学した真面目が取り柄の少女・笹川かすみ。特待生で入学したため、特待生を維持するためにも好成績をキープしなければならず、常に自習をしています。

そんな彼女の日課は、自習前に表紙やタイトルを見て気に入った本を読むこと。

その中にあった、1通の手紙を見つけたかすみ……。

その内容は「私とこの本に書かれているような特別な関係になってほしい」というものでした。

少し不信感はあったものの、本を介して不思議な文通をはじめ……。

顔の見えないお姉様との親密な関係を描いた、少女たちの物語です。

【作品の見どころ】

本作の見どころは、文通をはじめた当初の戸惑いと、だんだん親密になっていく少女の心の動きにあります。

かすみは少しでも気に入られようと、贈り物をしたりおそろいの髪型にして登校したりするなど、顔も名前も知らないお姉様と特別な関係を築こうと努力する日々。

いつかその正体がわかるわけですが、顔と名前がわかったときにどのような反応になるのかが、これからの楽しみですね。

【作品データ】
・作画:五十嵐純
・出版社:メディアファクトリー(カドコミ)
カドコミで、試し読みできます
・刊行状況:既刊1巻(以下続刊)