般若心経を聞いたことのある日本人は多いでしょう。これは、大乗仏教の教理を短くまとめたもの。西遊記で知られる三蔵法師(玄奘三蔵)が漢訳し、それが日本に伝わって広められたとされています。
しかし、家の宗教が違う宗派であれば、般若心経を聞く機会もありません。そのため、私たちの中には、聞いたことはあっても意味まではわからないという人も少なくないでしょう。そこで、この般若心経をモチーフにしたものが、こうの史代先生の『空色心経』です。
【作品紹介】
スーパーマーケットで働く、麻木あいが本作の主人公です。主人公は、夫の麻木蒼とふたりで暮らしています。
物語はコロナ禍にある日本のとある世帯で、体調不良で休んでいた主人公が何日かぶりに職場復帰するところからはじまります。
現代の日本と古代(紀元前)インドの間を行き来しながら進んでいく、般若心経を通して生き方を考え直す物語です。
なお、現代日本の描写とセリフは黒、古代インドの世界と般若心経の解釈に関するセリフは青の2色のみで描かれています。
いがらしみきお、こうの史代 ベテラン漫画家が描く無意味な生の奇跡:朝日新聞 https://t.co/3AkbQ7htwi
中条省平のマンガ時評、今月は
『人間一生図巻』(双葉社)
『空色心経』(朝日新聞出版)
の2冊について。ともに、生命とは何か、人間とは何かという根源的な問いを発する作品です。
— 朝日新聞マンガ取材班 (@asahi_comic) May 10, 2025
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【物語の見どころ】
般若心経で出てくる言葉(布施、持戒など)の意味や、日常生活における主人公およびその周辺にいる人物の心の動きを丁寧に描いている点が本作の魅力です。
筆者自身も実家は浄土真宗で、般若心経は写経で触れたことがあるだけでほとんど知りません。エンタメ性のあるマンガなので、多少大げさに書いたり100%表現しているわけではない部分もあるとは思いますが、しっかりと言いたいことは伝えられている作品です。
般若心経に詳しい人も、そうでない人も心の整理のために一読をオススメします。
【作品データ】
・作者:こうの史代
・出版社:朝日新聞出版
※公式ページで、試し読みできます
・刊行状況:全1巻