さまざまなしがらみとオサラバしたい人の駆け込み寺『縁切りエマ』

仕事や社会生活で関わった人に「相性が良くない」と感じたことのある人は多いでしょう。筆者である私にも、そう思った人がいます。良くないことですが、性格的に合わなかった上司からの業務命令を無視してしまったことも何度かあります。

それはさておき、縁切り祈願に強い神社は現実社会においても、全国各地に存在します。それほど、人間関係には現代社会において多くの人が悩んでいるのです。今回は、縁切りを願う人の闇について描いた、とらふぐ先生原作、伊藤柾章先生原案協力、今井康絵先生作画の『縁切りエマ』を紹介します。

【作品紹介】

都内某所にある「絶縁神社」が、本作の舞台。そこで神主をしている若い女性・エマが主人公です。

この神社は、心から悪縁を切りたいと望む人のみが訪れる神社で、黒い絵馬に切りたい縁を書くことでその願いが叶います。

「ただし、その過程で何が起こるのかは、まさに神のみぞ知る」という言葉が、何とも言えないおどろおどろしさですね。

その神社には、さまざまな「悪縁を断ち切りたい」という願いを持った人が訪れ、また今日も願いが叶えられていきます。

本作は「縁切り」に込められた、人間の本性を描き出す1話完結型のオムニバスダークファンタジーです。

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【作品の見どころ】

『縁切りエマ』に出てくるのは、さまざまな形で「縁切り」を願う人たち。

2025年4月に発売された1巻では、以下の5人が登場します。

  • 老い(エイジレス)
  • 不倫
  • 家族
  • ストーカー
  • 闇バイト

見どころは、ずばり人間であれば誰もが持っている黒い一面です。

理由はそれぞれとして、誰にでも「相性が合わない」と感じる人がいます。

接点が少なければ、そこまで気にすることがないのかもしれません。しかし、ひとたび意識せざるを得ない状況になると、人間は自分が見たいと思っている景色ばかりに目が向き、見るべきものには心を閉ざしてしまうもの。

その結果として、「〇〇と縁を切りたい(オサラバしたい)」という思考にたどり着くのです。

作画を担当した今井康絵先生は、『スターダムドリームス』『シンデレラコレクション』など、少女マンガで活躍されているだけあり、人間の外面の良さと内面の嫌な面を見事なほどに描き切っています。

取り返しのつかないことになって消えてしまう人もいれば、過ちに気づいて人生を取り戻す人ありで、さまざまなエンディングが描かれているようです。

どちらのエンディングにせよ、登場人物はある種の共感できるキャラクターが描かれているので、ドキドキしながら読める作品といえます。

【作品データ】
・原作:とらふぐ
・原案協力:伊東柾章
・作画:今井康絵
・出版社:小学館(女性セブン・めちゃコミックで連載中)
公式ページで試し読みできます
・刊行状況:既刊1巻(以下、続刊)