人間の本性は、そう簡単には変わらないものです。簡単に騙されます。逆に言ってしまえば、どんなに醜い本性を持っていても、それを隠したまま生き延びられるということ。実際に自身にとって心の底から嫌いな人が、周囲からはなぜか好かれるという事例は枚挙にいとまがありません。
公認心理師・臨床心理士、精神科医など、多くの人の内面を見た人でも、本性を見極めるのは容易ではないでしょう。今回は、理不尽に妹の命を奪われた女性刑事が、その元少年に凛々しく勇猛果敢に立ち向かっていく物語、すえのぶけいこ先生の『ライフ2 ギバーテイカー』を紹介します。なお、本作と2002年から2009年にかけて連載された『ライフ』と、関連性はありません。
【作品紹介】
主人公は、牧窪警察署に勤務する警察官(巡査)の倉澤樹(23歳)です。
正義感が強い性格の彼女には、ある暗い過去があります。それは彼女が17歳の夏、親しくしていた近所の少年・貴志ルオトの手により、妹の穂乃花を惨殺されたこと。
当時、大きく報道された殺害動機は「人を殺してみたかった」という身勝手なもの。当然、未成年だったルオトは国や法律に守られることになり、そこに強い憤りを感じた樹はやがて警察官になります。
そして、6年後その貴志ルオトが医療少年院から出所。診察にあたった医師は、ルオトについて「こんなに矯正教育がうまくいった例はない」「生まれ変わった」と称えるほど。
そのルオトは、樹に「再び大切なものを奪います」と脅迫状を送り、再び犯罪を起こし……。
彼女は、史上最悪の殺人犯との死闘に身を投じ……。
本作は、犯罪者との戦いを通し、正義とはなにか、更生とは何かを問いかける物語です。
【作品の見どころ】
18歳が成人となり、18~19歳は特定少年として厳しく罰せられる方向になりました。しかし、どんな犯罪を起こしても国や法律に守られる存在であることに変わりはなく……。
その矛盾と葛藤、樹の変わることがない怒りを描いています。
筆者自身が社会に出てイジメられた際、さすがに犯罪行為に手を染めようとは思わなかったものの、自身の評価が落ちることと引き換えに会社をズタズタにする選択をしたことがあり……。
そのこと自体は後悔していません。おそらく、今同じ立場になっても同じ行動を取るでしょう。
やり返すことがいいこととは言いませんが、イジメたりハラスメントなどを行う側も、同じことをやり返されても仕方ないくらいの覚悟を持ってもらいたいというのは、日々思っていることです。
本作をあらためて読み返して、そのことを強く感じました。
【作品データ】
・作画:すえのぶけいこ
・出版社:講談社(アフタヌーン)
※コミックDAYSで試し読みできます。
・刊行状況:全6巻