ひきこもりが100万人を超えた今「働く」意味を問う『人のために働く』

内閣府が行った「令和5年人々のつながりに関する基礎調査」によると、15~64歳の生産年齢人口において、50人に1人に相当する146万人が外出をほとんどしない状態が長期間続く「ひきこもり」状態にあると言われています。

原因はコロナや人間関係の悩み、不登校、出社拒否などありますが、いずれにせよ深刻な問題です。今回は、人生の岐路に立った青年が、世間と向き合いはじめるさまを描いた『人のために働く』を紹介します。本作は第88回小学館新人コミック大賞青年部門において、大賞を受賞した岩崎真先生のデビュー作です。

【作品紹介】

主人公は、根本たけお。中学で不登校になり引きこもっていた当時、祖父から「このまま行くと、社会で使いものにならなくなるぞ」という言葉をうけて働くことを考えはじめます。

主人公は青年になり、最初は工事現場で働き、工場、商品倉庫、パチンコ店など、さまざまな場所で生きづらさを抱えつつ、前進・後退・停滞を繰り返しながら歩み続けます。

その姿を通して、働く意味を問う作品です。

https://platform.twitter.com/widgets.js

【作品の見どころ】

全体を通して伝わってくるテーマは、物語の序盤で主人公がじいちゃんに語った「今は自分を持たないと、どこにも居場所がないんだよ」という言葉に凝縮されます。

「お金がないと生活できないので働く」というのは、当たり前の真理です。

ただ、お金のためだけに働くというのが正しいのかと言われれば、そうは言い切れないというのも、また正しいといえます。

「働く」ことはあまりにも当たり前過ぎて、その目的を考える機会さえ少ないかもしれません。

ただ、燃え尽きてしまうと、そこから元に戻すには多大なエネルギーが必要になることも確かなので、燃え尽きる前に本作を読んでみることをおすすめします。

【作品データ】
・作画:岩崎真
・出版社:小学館(ビッグコミックオリジナル)
ビッコミで試し読みできます
・刊行状況:全2巻(上下巻)