洋装下着がもたらした女性の社会進出を描く『ランジェリー・リリィ』

総務省の「労働力調査」によると、令和4年における女性の就業者数は3,024万人。かつては「女性は家庭を守り、男性は外で働く」ことが当たり前だったことを考えると、隔世の感があります。

昭和中期はまさに女性の社会進出が珍しかった時代でした。そのような時代に、社会進出を目指し奮闘する女性の姿を描いた物語として、北原雅紀先生原作、中田アミノ先生作画の『ランジェリー・リリィ』を紹介します。

【作品紹介】

舞台は、戦後間もない昭和中期の日本。新米女性記者の糸川百合が、本作の主人公です。

百合は「旬刊しゃちほこ」という雑誌で記者をしていますが、やる気とは逆に仕事は向かい風。

取材に行っては「女ではダメだ」と断られ、お茶を淹れようとしたら、お湯をふかしてしまうなどいいところがありません。

家に帰れば帰ったで、教室を運営している母親に「女の子らしくしなさい」といわれる日々。

そんな中、たまたま通りかかった舶来雑貨店で、華麗な下着「ガータービスチェ」に出会います。

洋装下着に出会ったことで、その魅力を伝えようと奮闘する女性を描いた物語です。

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【見どころ】

本作の見どころは、最初はまったく自信を持てなかった百合が仕事を通してやりたいことを見つけ、誇りを取り戻していくさまにあります。

よく「自己肯定感が大事」と言いますが、戦後間もない時代には結婚するのが女性の幸せと考えられており、本気で仕事をしたくてもそのような環境がなく、悪い言い方をすれば見下されていた時代でした。

「人からどう見られるか」しか考える余裕がなく、一部の強い女性のように「自分がどうありたいか」を考えられない中、奮闘する百合の姿は現代につながる道のように見えてきます。

下着を通した社会進出、社会貢献の行方が非常に楽しみです。

【作品データ】
・作画:中田アミノ
・原作:北原雅紀
・出版社:小学館(ビッグコミックオリジナル増刊)
公式ページで試し読みできます
・刊行状況:既刊1巻(以下、続刊)