怪我をしたダンサーが伝統芸能の舞台に『シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方‐』

能楽をテーマにした漫画『シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方‐』(壱原ちぐさ)が盛り上がりを迎えています。

主人公の葉賀琥太朗(はが こたろう)は高校生ながらもダンスユニット「DAZE(デイズ)」で活躍するダンサーでしたが、公演中に起きた事故で顔や上半身に大やけどを負ってしまい、ダンサーとして引退を決意します。しかし亡くなった祖母が夢中だった能の舞台を見たことがきっかけとなり、能楽師を志しました。

いきなり宝華至龍(ほうげ しりゅう)-宝華流の二十三世宝華宗家の長男-に「能楽師って、どうしたらなれますか?」と直訴して、ベテラン能楽師の丑満泰山(うしみつ たいざん)の通い弟子になれる展開は「早っ!」と思いますが、漫画ならではのスピードでしょう。そこでは泰山の孫である丑満北斗(‐ほくと)や女性能楽師を目指す卯ノ花璃乃(うのはな りの)らライバルも登場しています。

連載で目を見張るのはコタ-琥太朗の愛称-の急成長。それにはダンサーとしての経験や資質が大きく影響している模様で、コタが初めて人前で演じることになった新人が主体の舞台「碧霞会(へきかかい)」で、昔ばなしでも有名な「羽衣(はごろも)」を演じて拍手を貰うまでになっています。

少年サンデー誌において伝統芸能をテーマとした漫画では、2010年から2014年に連載していた『國崎出雲の事情』(ひらかわあや)があります。そこから約10年置いて本誌の柱となれそうな作品が登場したかなと思います。

美術展ナビの対談記事「「能楽を少年誌で漫画にする挑戦」『シテの花』壱原ちぐささんと宝生流20代宗家・宝生和英さんが対談【前編】」(https://artexhibition.jp/topics/news/20250307-AEJ2586211/)には、連載に至る経緯や監修を務める宝生和英さんの関わり方などが語られています。そこでは「能がテーマなので、変に誰かと勝負させたり、打ち負かすべき巨大な敵を無理に作ったりして少年漫画にするのは違うな」「王道を歩むけど、能を踏み外さない。そこのバランス感はすごく意識」との言葉もあるので、能バトルにはならない様子。

とありつつも、直近の連載では「碧霞会」にてタイプの異なる演者である丑満北斗が、コタの余韻を打ち破る舞台を見せています。主人公のコタとライバル達が切磋琢磨する展開が今後も楽しめそうです。

【作品データ】
作品:シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方‐
作者:壱原ちぐさ
監修:宝生流二十代宗家 宝生和英
連載:小学館「週刊少年サンデー」連載中
刊行状況:1巻発売中、以下続刊

【作品データ】
作品:國崎出雲の事情
作者:ひらかわあや
連載:小学館「週刊少年サンデー」連載
刊行状況:全19巻