『妹は知っている』を読者は知っている

ハガキ職人の日常を描いた『妹は知っている』(雁木万里)が面白いです。

皆さんは“ハガキ職人”をご存じでしょうか。基本的にはラジオ番組の投稿コーナーにネタをいくつも応募して多数採用される人のことを指します。

かつてはテレビ番組や各種雑誌にもハガキ職人がいましたが、どちらのメディアも凋落傾向にあることから、ハガキ職人も減少傾向にあるようですね。もっともラジオ番組も好調とは言いがたいものの、安定した低迷状態にあるのでしょう。またインターネットが発達し、郵便料金が値上がりした現代では、メールやXなどハガキに頼らなくても応募できる番組が増えています。こちらも新たなハガキ職人と言えそうです。

本作の主人公である三木貴一郎(みき きいちろう)は無表情で口数の少ないサラリーマン。仕事こそ無難にこなすものの、無表情すぎて周囲から浮いている感じもあります。そんな彼の正体が「フルーツパフェ」ラジオネームを持つ伝説のハガキ職人となっています。ただしそれを知っているのはグループ「XOXO(キスキス)」でアイドルタレントとして活動している妹の三木美貴(みき みき)だけ。ここでタイトルの『妹は知っている』につながります。

貴一郎のことを「世界一面白い」と思っている美貴は明確にブラコンなのですが、2人の距離が今後どうなるのかが見もの。と言うのは、物語が進むにつれて貴一郎のことを「ちょっと気になるな」と思う女性が何人も出てくるためです。今後、それらの女性が美貴と出会った時、どんな展開になるのかが興味津々です。

さて、伝説のハガキ職人と呼ばれる「フルーツパフェ」こと貴一郎のネタをいくつか紹介しましょう。最初に登場するのが「戦いの場面で成功したとしても劣勢№1 → 真剣白刃取り」です。これを聞いた美貴は「…うふっ」と含み笑いをし、貴一郎は満足げな表情をします。

次々に行きましょう

・うちのお母さんは元アイドルかもしれない → 10秒以上握手してくれない
・競馬場に追加された神システム → 入り口にセーブポイントができた
・マイナスな出来事をプラスにする → ガムを踏んだ。この島に俺以外にも漂着している…!
・愛を感じたエピソード → 前回社用車に乗った人がガソリン満タンにしてくれた
・漢(おとこ)の一日 → 尿検査で俺だけジョッキを渡された
・コンタクトレンズをコンレンと略さないのはレンコンが頭をよぎるから

いかがでしょうか? かなりのハイレベルに思えます。気になるのは、このペースを今後も続けて行けるのか。ネタ切れになった時が、連載終了なのかもしれませんね。

【作品データ】
作者:雁木万里
連載:講談社「ヤングマガジン」連載中
刊行状況:1巻発売中、以下続刊