自分の居場所を求めて懸命にもがく25歳女性の物語『林檎の国のジョナ』

誰にも触れられたくないコンプレックスに感じる点があります。多くの人がそこに触れられることを嫌がるものの、自分と同じもしくはそれ以上の人を見ると、なぜか安心してしまう傾向があるようです。

そんな自分に嫌気が差し、自分の居場所を求めて田舎に来た女性が、その傷ついた心を癒やしていく物語として、松虫あられ先生の『林檎の国のジョナ』を紹介します。もともとは「月刊!スピリッツ」で連載されていた本作。現在は、Webアクションに移籍して連載中です。

【作品紹介】

本作の主人公は、加藤アリス。その名前と体型にコンプレックスを持っている25歳の女性です。

もともとアパレルショップ店員のアリスは、洋服が大好き。しかし、自身の体型にコンプレックスがあり、かわいい服を見ても「自分の体型をごまかすためのものなのか」と落ち込んでしまいます。

そして、自宅では押し付けが強い母親に悩まされる毎日。そんな中で、アリスはいつしか「このまま存在を消してしまいたい」と思うようになるのです。

そんなとき、実家のある埼玉県を離れてやってきたのは、親戚が住んでいる青森県。

そこで、リンゴ農家で働く青年・正市と小さな女の子・菜知に出会います。

青森の青い空は、アリスの傷ついた心と体を少しずつ癒やしていき……

見た目コンプレックスのある、20代女性の出会いと再生を描いた物語です。

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【見どころ】

本作の見どころは、自身のコンプレックスにまっすぐ向き合っていくアリスにあります。

童話の主人公で出てきそうな名前のアリスは、自分の名前とその太った見た目にコンプレックスを持ち、自分より太った人を見ると安心する自分を「最低だ」と思っていました。

アリスは青森県に向かい、そこで出会ったのが美しすぎる青年・正市。彼もまた、自分の居場所を求めていたのです。

まさに偶然すぎる出会いを果たしたふたりが、どうやって心の傷を克服して、立ち直っていくのかが描かれています。

近年は発達障害(いわゆるADHDやASDなど)の概念が見直され、これらの障害があっても生きやすい社会の実現が図られつつあるものの、まだまだ生きやすいとは言えないでしょう。

そんな中で懸命に生きようともがく、アリスや正市、菜知の姿を見ると、心がすっと軽くなるのを感じる作品です。

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【作品データ】
作者:松虫あられ
出版社:双葉社
Webアクション掲載
刊行状況:既刊1巻(以下、続刊)