老若男女問わず、それぞれにとって大切にしたいものがあります。ある人にとっては恋愛、他の人にとっては友情もしくはそれらに代わる何かかもしれません。たとえ何らかの形で終わりを迎えたとしても、それは永遠にその人の心のなかで残るものです。
そんな甘酸っぱいような、ビターなような想いを抱えた人たちに向けた作品として、今回は牧野あおい先生の『たったひとりの君へー牧野あおい作品集ー』を紹介します。本作は、2009年から2018年にかけて発表された短編集です。
【収録作品の紹介】
本作には、過去に発表された短編が4作収録されています。
- 『RECー君が泣いた日ー』(2010~2011)
- 『制服なんて好きじゃない。』(2018)※単行本未収録
- 『最終ループ』(2010)
- 『HALーハルー』(2009)
【見どころ】
いわゆる少女マンガに見られる、キラキラしている感じの絵柄が特徴です。
しかし、どの作品にも人間の心理を深く鋭く切り取る描写があり、絵柄と作風とのギャップが牧野あおい先生の魅力といえるでしょう。。
個人的に心に残った作品として、初めて単行本化された『制服なんて好きじゃない。』という作品について触れてみましょう。
主人公は4月から同じ中学校に通う、上原琳花と朝倉泉未。
ちょっと幼さの残る琳花と、モデルのような体型だけど小心者な泉未と対象的なふたりです。
小さいときから写真が好きだった琳花は写真部に、泉未は上級生に誘われてダンス部に入部します。
ダンス部でキラキラ輝いているように見える泉未を見て、琳花は嫉妬のような感情を覚えます。
しかし、その感情をぶつけたときに「泉未は変わっていない」ことに気づくのです。
周りが変わったとしても変わらない友達との絆について、制服をキーワードに描いています。
他の3作品についても、人間関係の機微が巧みに描写されており、何度でも読み返したくなる作品ばかり。
300ページ超あるため、コミックスとしてはやや厚めです。しかし、世代を超えて読んでもらいたいので、個人的には紙の単行本で読むことをおすすめします。
【作品データ】
・作者:牧野あおい
・出版社:集英社(りぼんマスコットコミックス)
※公式ページで試し読みできます
・刊行状況:全1巻