児童養護施設の闇を描く社会派マンガ!『それでも、親を愛する子供たち』

こども家庭庁の統計によると、令和4年度児童相談所における児童虐待相談対応件数(速報値)が3年連続で20万件超えの219,170件ありました。平成23年度が59,919件なので、この10年で約3.5倍増加した計算です。

このように年々過酷になっている児童虐待の現実を描いたのが、押川剛先生原作、『「子供を殺してください」という親たち』で作画を担当した鈴木マサカズ先生が構成担当、うえのともや先生が作画を担当した作品が、今回ご紹介する『それでも、親を愛する子供たち』です。

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【作品紹介】

本作の舞台は、児童養護施設のサニーベル学園。

児童養護施設の具体的定義は、児童福祉法第41条により下記のように定められています。

  • 両親のいない子どもの養護
  • 虐待されている児童の養護
  • 養護を要する児童の入所・養護
  • 退所したものに対する相談
  • 自立のための援助

児童養護施設に入所する児童の事情は、ネグレクト(育児放棄)や身体的虐待・心理的虐待・性的虐待などざまざま。

近年では、特に身体的虐待と心理的虐待が増えており、10年前と比較すると前者は約2.5倍、後者は11倍以上増加しています。

本作は、年々過酷になっている児童虐待と児童養護施設の現実について描いた作品です。

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【見どころ】

本作の見どころは、現代社会を取り巻く現実について描ききっているところにあります。

第1巻で登場するのは、両親(母親と再婚した父親)にネグレクトされた女子児童です。

母親は娘の育児にまったく関心を示さず、父親には手をあげられていました。そのため、施設でも気に入らないことがあると、別の子供の髪の毛を引っ張ったり、殴りかかったりします。

こういった問題行動も、大人に過去にされたことを真似しているに過ぎないわけです。

心理的背景を知らない私たちから見ると、単なる問題行動のひとつに過ぎません。それでも原因があるわけで、その原因を丁寧に解説している点が、本作の強みといえます。

原作者の押川剛先生はこのような社会問題に強い作家で、構成担当の鈴木マサカズ先生は社会派マンガの第一人者なので、今後の展開にも大きな期待が持てるでしょう。

これからも児童虐待をめぐるさまざまな問題をあぶり出してくれることを期待します。

【作品データ】
作画:うえのともや
構成:鈴木マサカズ
原作:押川剛
出版社:新潮社
くらげバンチにて閲覧可能
刊行状況:既刊1巻