病院で連想する言葉を聞かれたら、あなたはどう答えますか? こう質問をされたら、多くの人は「医師」もしくは「看護師」と答えるのではないでしょうか。実際、看護師は患者さんのケアを行う仕事なので、チーム医療で中心的な存在です。
さて、白衣の天使と呼ばれることが多い看護師。その実態は、患者さんのケアや医療補助にと忙しい仕事です。その姿を見ていると、白衣の戦士のほうが似合うのではないかと思うこともよくあります。そんな看護師の実際を描いたマンガが、佐々木倫子先生作・小林光恵先生監修の『おたんこナース』です。
【あらすじ】
本作の舞台は、東京K病院。その病棟に勤務する、入職5週目で21歳の新人看護師・似鳥ユキエが主人公です。
5月のある日、半袖のシャツから見える腕を主人公が電車内で凝視しているところから、物語がスタートします。
まだまだ新人なので、指導係から指示を受けて業務に励む身分。当然のことながら、看護師としての知識も技術も、まだまだ未熟な状態です。それでも、やる気とガッツだけはあるユキエ。
そんな彼女がやっかいな患者さんと真正面から向き合い、看護とは何かを学んでいく姿を描く、1話完結型のオムニバスストーリーです。
【見どころ】
『おたんこナース』の見どころは、主人公のユキエとやっかいな患者さんたちの関わりにあります。
病院内では医師・看護師など職員の指示に従わけければなりません。そうしないと、秩序がめちゃくちゃになるだけではなく、治る病気・ケガも良くならないので、当たり前のことですね。
しかし、彼(女)らは医師・看護師にとってやっかいな振る舞いをして、適切な看護を拒みます。その時、ユキエは持ち前の負けん気の強さで、患者さんに食い下がり、時には先輩看護師の力を借りて「なぜ問題行動を起こすのか」について、そのプロセスを明らかにしていくのです。
最初にも書いたように、看護師は「白衣の天使」と呼ばれます。実際、そういうイメージで見られがちです。しかし、それはあくまでも患者さんの様子を見て、徹底的に観察して関わった結果であることがわかります。
『おたんこナース』のタイトルの由来でもある「おたんこなす」とは、間抜け・とんま・お調子者などの意味がある言葉です。あまりいい意味で使われる言葉ではありません。しかし、これは主人公でもある似鳥ユキエの特徴そのもの。
看護師として成長していくユキエをはじめとした東京K病院に勤務する看護師の様子は、今読んでもシリアスかつ笑いながら読める貴重な作品です。
【作品データ】
・作者:佐々木倫子
・原案・取材:小林光恵
・出版社:小学館
※公式ページで試し読みできます
・刊行状況:全7巻