地域住民の健康を守るために奮闘するお仕事を描く『保健師がきた』

医療関連の資格は、種類もさまざま。その中に保健師という資格があります。具体的な仕事内容は、地域の人たちに向けた保健指導や健康相談などです。ただ、看護師・助産師のようにあまり知られていない現実があります。

実際、就職先も市区町村にある保健センターや役所が多く、医療機関で見かける機会が少ないのは確かです(出典:マナビジョン)。今回は、コロナ禍で活躍した保健師の仕事を描いた埜納タオ先生の『保健師がきた』を紹介します。

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【作品の紹介】

『保健師がきた』の舞台となるのは、瀬戸内を臨む小さな町・潮三市。その潮三市にある潮三市保健センターに採用が決まった22歳の新入職員・保健師の三御一花(通称・サンゴ)が主人公です。

保健センターに勤務する保健師の仕事は幅広く、在住する乳幼児から高齢者までを対象に、医療・健康に関する活動や社会福祉に関する活動を行います。

その中で、主人公のサンゴが担当しているのは母子保健係。生後3ヶ月を目安に、母子の健康状態をチェックする新生児訪問などが主な仕事です。

その新生児訪問を一緒に回るのが、サンゴの実地指導者(プリセプター)の七海さやか。元ヤンキーらしく、ちょっと大柄で怖い印象を与える保健師です。しかし、保健師としての能力は高く、サンゴに的確なアドバイスをします。

新人保健師のサンゴが、指導者の七海からは厳しく、周囲には優しく見守られながら、保健師として成長していく物語です。

【見どころ】

本作の見どころは、地域住民が健康であるために寄り添うサンゴをはじめとする、保健師の姿勢です。

第1巻では、下記の人たちの健康問題に寄り添っています。

  • 引っ越したばかりで、育児に悩むママ
  • メタボリック・シンドローム予備軍の中年男性
  • ゴミ屋敷と化した家に住んでいる女性・地域住民
  • 子どもの発達に悩むママ

それぞれ異なる悩み・課題があり、サンゴたち保健師は関係部署とも折衝を重ねながら動く毎日です。

第1巻の中で心に残ったセリフは、引っ越したばかりで知り合いもいない、ワンオペ育児で心に余裕がなくなっていた母親に対して、どのように支援するか悩んでいたサンゴに七海が伝えます。

「できることならなんでも、相手の立場に立って伴奏する。誰ひとり取りこぼさない、それが保健師でしょ」

看護師は病気になった際のケアが仕事の領域であるのに対して、保健師は病気になる前にアプローチして未然に防ぐことがその領域です。

最初はなかなか心を開かなかった相談者が、熱意を持って接しているうちに少しずつ心をひらいていく過程を見られるのが、本作の強みといえます。

11月には第2巻が発売される予定なので、今後の展開が楽しみですね。

【作品データ】
・作者:埜納タオ
・監修協力:野口緑
・出版社:双葉社(JOURコミックス)
公式ページで試し読みできます
・刊行状況:既刊1巻