結婚からはじまる恋愛の物語『わたしの幸せな結婚』

自己や家の利益のために、結婚する当事者の意向を無視して、自分の子・弟妹などを結婚させることが政略結婚です。室町時代から増えはじめ、戦国時代は関係強化のため、大正時代は跡継ぎ問題や華族制度の廃止などが背景にありました。

結婚をテーマにしたファンタジーは、なろう系のオンライン小説では異世界転生モノと並ぶ定番のテーマ。その中で人気の高い作品が、今回ご紹介する『わたしの幸せな結婚』です。顎木あくみ先生が書いた小説をコミカライズしたのが高坂りと先生で、2023年9月現在ではシリーズ累計で総発行部数が900万部を突破しました(電子を含む)。

【あらすじ】
大正期の日本をモチーフとして、古来から鬼・妖などと呼ばれる人間に害をなす異型のものを退治する、超常的な力を持つ異能者が生まれる特異な家系が連綿と続く、斎森家が物語の舞台です。

主人公は斎森家の長女・斎森美世。両親の斎森新一と母親の澄美は、異能者の家系同士で政略結婚したものの、主人公には異能がありません。澄美が亡くなった後、香乃子と再婚。再婚後は異母妹となる香耶が誕生します。

異能を受け継いだ異母妹の香耶。香耶が能力を開花させたことで、美世は家族全員から虐げられて使用人以下の扱いを受けることに。

そんな時、異能の家系の名家である久堂家の当主で、冷酷無慈悲と噂される清霞の婚約者候補として、久堂家に追いやられます。

これまでに金や地位目当てのワガママな女性を見てきたことで、女性に対して苦手意識を持っている清霞。しかし、つらい生い立ちを経験してきた美世の過去を知ったこと、櫛を贈ったときにわずかに見せた笑顔を見たこと、自らに心から尽くす美世に触れることで深い愛情を抱いて婚約を申し出ます。

人に必要とされる喜びを清霞から教えてもらい、その申し出を喜んで受け入れた美世。結婚からはじまる恋愛をテーマにした和風ファンタジーです。

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【見どころ】
主人公の美世は、亡くなった母親・澄美の家系である薄羽家に由来する「夢見の力」を持っているものの、制御することができずまだ開花していません。

また、嫁いだ久堂家の使用人・ゆり江やひいきにしている呉服店の従業員など、美世の高い魅力を見抜いている人物の支えを借り、その能力を開花させていく過程が見どころです。

現実世界でもさまざまなコミュニティの中で、うまくいかないことで自信をなくしている人は多いでしょう。自身を信じてくれる清霞の期待に応えようと立ち上がる美世の姿を、自身と重ね合わせることで、原作小説・コミックスともに人気シリーズとなっています。

今後も、ふたりの前にはさまざまな障害が立ちふさがると思います。お互いの愛を深め合うため、どのように克服していくのかが楽しみでなりません。

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【作品データ】
作画:高坂りと
原作:顎木あくみ
キャラクター原案:月岡月穂
出版社:ガンガンONLINE(スクエア・エニックス)
ガンガンONLINEにて試し読み可
刊行状況:既刊5巻(小説版は8巻まで刊行)