若いうちからの終活のススメ~終活エンターテイメント『ひとりでしにたい』

国勢調査のデータによると、単身世帯・夫婦のみ世帯といった孤独死の予備軍となる可能性の高い世帯が、令和2年時点で約6割に達しています。そしてもっと衝撃的だったことは、孤独死における現役世代と60代以上の高齢者との割合が、ほぼ4:6であったことです(出典:第8回孤独死現状レポート)。

未婚率も年々上昇している現代社会において、孤独死はどの世代にも起こり得る非常に身近なテーマといえます。孤独死した親族を見たことで、自らの生き方を見直した女性の物語として紹介するのはカレー沢薫先生の『ひとりでしにたい』です。本作は、第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しています。

【あらすじ】

主人公は、山口鳴海。35歳の独身女性です。美術館学芸員をしている彼女は、マンションを自分で購入して、猫と一緒に暮らしています。

物語は、主人公が子どもの頃に憧れていた伯母さん(山口光子)の話からスタート。

お父さんのお姉さんで
大きな会社で働いていて
いつもオシャレでいいにおいがして
「おとなになったらこんなふうになりたい」と思える人だった

(第1話:ぼくらはみんな死んでいくより)

生涯独身だったことから、仕事に人生を捧げたキャリアウーマンだったのでしょう。

しかし、定年後は自宅がゴミ屋敷となってしまい、孤独死した挙げ句無惨な姿で発見されます。

この出来事をきっかけに、主人公の鳴海が終活を意識。さまざまな方面から情報収集を始める、終活エンターテイメントです。

https://platform.twitter.com/widgets.js

【見どころ】

『ひとりでしにたい』の見どころは、主人公・鳴海と官庁から出向中のエリート・那須田優弥との絡みです。

優弥の方がもともと鳴海に興味を持っていたとはいえ、24歳の若者。一方、主人公の鳴海は35歳の独身なので、なかなか絡みづらそうに思われる方も多いでしょう。

そんなふたりが「孤独死」という共通のキーワードをネタに、話をするようになります。

そんな優弥の話は、とても現実的。

  • 「結婚すれば将来は安泰」というのは昭和の発想
  • 結婚したら親→夫→自分と介護人生まっしぐら

など、聞いているこちらがグサッとくるようなことを言ってきます。

平均寿命を考えると当たり前の話ながら、それでも身につまされる話です。

子どもが介護してくれるという価値観が通用しない現代だからこそ、30~40代の若いうちから終活を意識しようと思わせてくれます。

それぞれのキャラクターの細かい心理描写も丁寧に描かれているので、そういう作風が好きな方にもおすすめです。

https://platform.twitter.com/widgets.js

【作品データ】
作画:カレー沢薫
原案協力:ドネリー美咲
出版社:講談社
コミックDAYSにて読めます
刊行状況:既刊8巻