マンガ大賞2010グランプリ作品『テルマエ・ロマエ』レビュー

3月17日の記事でもお伝えした通り、見事「マンガ大賞2010」のグランプリに輝いたのは、ヤマザキマリ氏の『テルマエ・ロマエ』となった。月刊コミックビームにて連載中の作品で、ローマと日本と風呂について描かれたギャグ漫画である。

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

正直、この作品が大賞を取ると予想できた方は少なかったのではないだろうか。
誰もが大賞有力候補だと考えていた『宇宙兄弟』(小山宙哉)との接戦の末、僅差で『テルマエ・ロマエ』が勝利。三年目となる「マンガ大賞」で、一昨年、昨年のグランプリとはかなり異なったタイプのこの作品が大賞に選ばれた。

舞台は古代ローマ。建築家のルシウスという男が主人公である。
大変生真面目でお堅い男・ルシウスが、ひょんなことから現代の「日本」へタイムスリップ。そこで見た「平たい顔族」こと日本人の風呂へのこだわり、斬新かつ機能的な技術──それらに感銘を受けたルシウスはその技術とアイディアをローマへ持ち帰り、誰も想像できなかった公衆浴場を建設することに。

そんなあらすじを聞かされても疑問に思われるかもしれない。
しかし読んでみるとその異色なストーリーに誰もが引き込まれてしまうのである。日本人だからこそ納得できる風呂に関する描写と、それにいちいち真面目に驚くルシウス。その光景を見たら誰しも笑わずにはいられない。

この作品、実際マンガ大賞でグランプリに輝くまではそこまで知られた作品ではなかった。
2位の『宇宙兄弟』や3位の『バクマン。』などの方が知名度は高かったし、書店でもよく見かけたのではないだろうか。

しかしマンガ大賞グランプリに輝いたことで、今後注目度がぐんと上がることは間違いない。
実際、先日まで『テルマエ・ロマエ』を置いていなかった書店でも、授与式の翌日にはポップ付きの平積みで販売を開始していた。大賞を受賞した影響は大きい。

今後書店だけでなく、漫画喫茶やレンタルコミック店でもこの作品を手に取る人が増えることは間違いないだろう。