平日の練習時間が50分?効率的な練習で頂点を目指す『べー革』

近年ではサッカーにやや押され気味とはいえ、野球といえば日本で人気の高いスポーツのひとつです。では、野球と聞いてどのようなワードを思い浮かべますか?経験者であれば「長時間の練習」という答えを出す人が多いのではないでしょうか。

確かにその通りかもしれません。実際に、高校以上になると土日は平日でも3~4時間近く練習しているところも多いでしょう。そういう要素を否定とまではいかなくとも、覆す高校があったら皆さんはどう思いますか?

今回ご紹介する、クロマツテツロウ先生の『べー革』では、ここであげた長時間の練習や反復などの量ではなく、質の練習を提唱するマンガです。

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【『べー革』とは?】

舞台は、神奈川県にある私立相模百合ヶ丘学園高校。そこの野球部に所属する入来ジローが主人公です。

エースで4番、主将の兄・一郎が念願の甲子園を目指して戦ってきた、神奈川県大会の決勝戦。横須賀隼人高校対横浜学院大附属との試合を、スタンドで応援しているところから物語がスタートします。

激闘もむなしく敗れて泣き崩れる兄を見て、ジローは『オレが兄ちゃんを甲子園に連れていく』と決意を新たに。しかし、父と妹は「練習についていけるわけがない」と、兄と同じ高校へ進むことを猛反対。母は、基本的に野球の強豪校に進学するのは賛成です。しかし「ジローは成績もいいのだから、進学校の強豪校に進学してほしい」と望みます。

兄も「ジローは成績がいいし、頭のいい選手はどこまでも伸びる可能性がある」と言い、さらに乙坂監督就任以来、私立相模百合ヶ丘学園高校がベスト8の常連で、前年の夏はベスト4入りを果たしたことを理由に「行けるなら、ここが相応しいのでは?」と母の言葉に賛成。

兄の言葉に納得したジローは、渋々ながらもうなづいて猛勉強の末に合格したのです。

意気揚々と進学しますが、監督の乙坂から出た言葉は「平日の練習時間は実質50分ほど」や「頭で考え、実行し、結果につなげろ」というもの。猛練習を想像していた新入部員は、一同あっけにとられてしまいます。

量ではなく練習の質を追い求めるところからはじまる、ベースボールを根底から覆そうとする高校の物語です。

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【見どころ】

見どころは、乙坂監督の野球に対する考え方が浸透していく過程にあります。

彼の考え方は、至ってシンプルなもので「エラーが起こる理由は送球ミスが多く、全体の4割を占めている。だから投げる能力の高い選手を取る。そして、投手をしない選手でも150kmを超えるボールを投げられるようにする」というものです。

そのうえで、フィジカルデータの基準を数値で示して、その基準を超えられるようトレーニングを課していきます。

実際はこれだけではありませんが、徐々に示される目指す野球の全体像に、新一年生も納得して練習に打ち込んでいくのです。

本作のモデルになっているのは、広島県呉市にある私立・武田高校。武田高校の監督は「全員が140kmの球を投げられるようになり、本塁打を打てるようになれば勝てる」というもの。

まだ、全国大会の出場経験はないものの、育成指名ながらプロ入りした選手も輩出するなど、徐々に成果を上げています。

根性論ではない高校野球。最終的にどこまで勝ち抜けるのか、楽しみですね。

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【作品データ】
・作者:クロマツテツロウ
・出版社:小学館
サンデーうぇぶりで試し読みできます
・刊行状況:既刊5巻(以下続刊)