性被害・ジェンダーなど人間の醜い部分を描いた『先生の白い嘘』

どんなに優秀な人にも、誠実そうに見える人にも、男女関係なく心のどこかに闇があります。社会で生活をしていくうえで、私たちは大なり小なりストレスを抱えており、ストレスを発散しながら普段の生活や仕事をしているのです。

一般的に女性よりも男性のほうが体も大きく、力も強い。性犯罪の加害者になりやすい男性は、言葉で圧倒する人が多く、女性としてはどうしても抗う手段を失う傾向にあるのは致し方ないところでしょう。そんな性被害の実態を描いた作品が、鳥飼茜先生の『先生の白い嘘』です。本作は、2015年の「このマンガを読め!」で、第8位に入賞。2024年7月5日より実写映画が公開されています。

【『先生の白い嘘』とは?】

『先生の白い嘘』とは、男女の間に存在する性の不平等さをテーマに描いた作品です。連載開始直後からその生々しい描写が話題を集め、単行本は紙・電子を合計して累計100万部を突破しています。

主人公は、24歳の国語教師・原美鈴。

美鈴の友人・渕野美奈子が、婚約者を紹介するところから物語がスタートします。連れてきた婚約者こそ、後に性加害の張本人となる早藤雅巳。美奈子の引っ越しの手伝いをしていた時、美鈴は雅巳にレイプされ……

男女の間にある性差を格差として振りかざす男性に対し、真正面から対峙することで、性の不平等など人間の持つ矛盾を描いた物語です。

【見どころ】

本作の見どころは、人間の強さと弱さ、醜い部分を見られた時の反応など、人間心理を描いているところです。

先に紹介した教師の美鈴、友人の美奈子、美奈子の彼氏である早藤の他、担任している生徒の新妻祐希、三郷佳奈、佐古田カナが登場します。

彼ら・彼女らは、それぞれの幸せを祝うふりをしながら、影では不幸を願い合っているような関係です。

登場人物のそれぞれに、下記のような悩みがあります。

  • 親友のふりをしながら、影では見下している
  • 親友の彼氏にいきなり襲いかかられてレイプされた
  • 見た目はおとなしそうだけど、性へのトラウマがある
  • 一見モテそうだけど、性へのコンプレックスを持っている
  • バイト先の店長の妻に迫られたことへのトラウマで恋ができない

時には傷を舐めあい、またあるときはさらなるリスクを犯すなど、さまざまな場面での登場人物が取る選択も、本作の見どころといえます。

心のなかで「誰かに救われたい」と思っている人は、今の時代多いのではないでしょうか。しかし、本当の意味で救ってくれるのは自分以外にいないのかもしれません。

そんなことに気づかせてくれる作品です。

https://platform.twitter.com/widgets.js

【7月5日に映画化】

7月5日からは映画も公開されている『先生の白い嘘』。

主人公の原美鈴を演じているのは、演技力に定評のある奈緒さん。早藤雅巳役に風間俊介さん、新妻祐希役が猪狩蒼弥さん、渕野美奈子約を三吉彩花さんがそれぞれ演じています。

本作は、ジェンダーや男女の性差などデリケートな部分をテーマとしているので、演じるのも非常に難しい作品でしょう。

そこに体当たりで臨んでいる役者の皆さんに、敬意を表します。

https://platform.twitter.com/widgets.js

【作品データ】
・作者:鳥飼茜
・出版社:講談社
コミックDAYSで試し読みできます
・刊行状況:全8巻