5年ぶり『ヒストリエ』12巻発売、「アフタヌーン」8月号で岩明先生の近況判明

6月21日に『ヒストリエ』(岩明均)の単行本12巻が発売されました。

11巻の発売が2019年3月ですから、実に約5年ぶりの発売となりました。掲載誌の「アフタヌーン」が月刊誌ですので連載ペースが遅いのもあるものの、それでも「長かったなあ」が実感です。その辺りの事情について、25日発売の「アフタヌーン」8月号にて岩明先生からの説明が掲載されています。それに触れつつ『ヒストリエ』を解説していきます。

『ヒストリエ』の舞台は紀元前300年ごろの地中海周辺。マケドニアのフィリッポス王やアレクサンドロス大王に仕えたエウメネスを主人公としています。史実では不明瞭なエウメネスの幼年期や少年期、青年期について岩明先生は、異民族の出身→カルディア(有力な都市国家)の名士の養子→策略にはまって奴隷落ち→海で遭難→才覚を活かして自由人→マケドニアの書記に採用、のように大胆な設定で描いています。

その後、マケドニアのフィリッポス王やオリュンピアス王妃、アレクサンドロス王子らと関わりが深くなることで物語が進んでいきます。単行本12巻ではフィリッポス王によるオリュンピアス王妃の暗殺計画、アレクサンドロス王子に似たパウサニアスの登場、パウサニアスの活躍により王妃暗殺計画の失敗など、ますます面白くなりそうなところが収録されています。

ちょっと横道にそれますが、本作は2010年に第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の大賞、2012年に第16回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しています。過去記事「第16回「手塚治虫文化賞」贈呈式レポート」(全4回)を合わせてどうぞご覧ください。

「第16回「手塚治虫文化賞」贈呈式レポート【その1】」http://comic-candy.com/archives/2366
「第16回「手塚治虫文化賞」贈呈式レポート【その2】」http://comic-candy.com/archives/2369
「第16回「手塚治虫文化賞」贈呈式レポート【その3】」http://comic-candy.com/archives/2372
「第16回「手塚治虫文化賞」贈呈式レポート【その4】」http://comic-candy.com/archives/2373

そこで岩明先生が「進行が遅くて別の意味でロングセラー」「今でもかなり全速力だがもっとがんばりたい」とのコメントを述べたとあります。確かに10年以上前から休載や隔月掲載が目立っていたのは事実です。

そして「アフタヌーン」8月号にて、岩明先生より「引き続いての長期休載の事」が発表されました。冒頭で読者に感謝の言葉を述べた後、11巻から約5年間過ぎたことについて「全速力でした」と書いてあります。多くの読者が「なぜ?」と思うでしょうが、その後に体調不良について明かされています。一番大きな原因として「(日常生活に支障をきたすほどではないが)利き腕の軽い麻痺」があり、その他にも「(視覚画像のゆがみが生じる)片目の眼底出血」「年齢による体力の衰え」「判断力や集中力の低下」があるとのこと。

ウィキペディアによれば、岩明先生は1960年生まれの63歳。ここ3年の年末に、漫画家や漫画関係者の訃報をまとめていた身としては、岩明先生と同年代の方々が少なからず亡くなっているのを知っているため、「何とぞ無理せずに」と願いたくなります。

発表では「原稿描き貯め」「進行を少しでも速くするための模索」を目的に長期休載に入ったとしています。つまり再開時期は未定です。アフタヌーン編集部からのコメントでは「いずれは再開する事になろうかと思います」との岩明先生の言葉を紹介しつつ、「お待ちいただければ」などと締めくくっています。

史実では40代半ばの働き盛りで亡くなったエウメネス。『ヒストリエ』では、まだ20代半ばと思われます。そう、まだ20年分はあるんですよね。これから歴史では、アレクサンドロス大王の遠征、死去、そしてディアドコイ(後継者戦争)と続きます。果たして『ヒストリエ』は完結できるのだろうかと思うのですが、それでもくれぐれもお体をいたわりつつ無理しないで欲しいものです。

【作品データ】
作者:岩明均
連載:講談社「アフタヌーン」連載中
刊行状況:1~12巻発売中