2012年5月25日(金)、築地にある浜離宮朝日ホールにて、第16回「手塚治虫文化賞」贈呈式は滑り出すように静かに幕を開けた。毎年マンガ界に偉大な功績を残す力作が名を連ねる中、第16回を迎えた今年は岩明均の『ヒストリエ』が大賞に輝いた。
「手塚治虫」といえば、現代のマンガ界の基盤を作り上げた、始祖とも言うべき偉大なマンガ家だ。『手塚治虫文化賞』とは、その手塚氏が残してきた業績「日本のマンガ文化の発展、向上」を記念した賞である。この賞は、手塚氏の志を継ぐマンガ文化の発展を目的として、朝日新聞社が1997年に創設した。歴史は浅いものの、この賞の持つ重みは日本マンガ界の芥川賞といったところだろうか。
本賞は、2011年に刊行されたマンガ単行本を対象となっている。書店員や専門家などマンガ関係者による推薦結果を参考に、社外選考員8人がポイント投票を行う形式だ。各選考員の持ち点を15点とし、最高点を5点(最高点は一作品にのみしかつけられない)に設定して配分される。
過去からの“不動の名作”を含む一次選考対象28作品のうち、上位6作品が最終選考に残った。マンガ大賞ノミネート作品は以下の通りである。
1.『ヒストリエ』(岩明均)14pt
2.『あの日からのマンガ』(しりあがり寿)10pt
3.『3月ライオン』(羽海野チカ)9pt
4.『ちはやふる』(末次由紀)7pt
5.『進撃の巨人』(諫山創)6pt
『I【アイ】』(いがらしみきお)6pt
授賞式冒頭、主催者からの挨拶を経て、手塚治虫氏のご子息である手塚眞氏が祝辞を述べた。穏やかな話し声が会場の雰囲気をさらに澄みやかにしていくようだ。眞氏は賞を創設した当初を振り返って、「マンガは日本の文化になれるのか」そんな想いを込めて、「この賞にあえて“文化賞”と名付けた」と語った。今まさにマンガは、日本人の文化を語るには欠かせないものとなった。眞氏が口にするようにマンガは日本人の「エネルギー源」や「活力」であることは、もはや疑いようがない。――眞氏は祝辞の最後をこうしめくくった。「この賞が、日本のみならず世界の賞になることを願う。立派な人間の歴史としてマンガを育てていけたらと思う」と。
【関連URL】
・「手塚治虫文化賞」朝日新聞社インフォメーション
http://www.asahi.com/shimbun/award/tezuka/