娘と泥棒が入れ替わり!不穏系ほのぼのコメディー『こどもどろぼう』

入れ替わり設定は、マンガ・小説・映画・ドラマを問わず、よくある設定です。入れ替わる対象が異性か、同性かで違いはあるものの、有名な作品としては古くは平安時代の『とりかえばや物語』から、映画ではチャップリンの「独裁者」や大林宣彦作品の「転校生」などがあります。

さて、新たな入れ替わり作品として、今回ご紹介するのは新鋭マンガ家・山吹先生の『こどもどろぼう』という作品です。本作は、『ネギのゆくえ』にて、第83回ちばてつや賞一般部門準大賞を受賞した作者のデビュー作です。

幸せを絵に描いたような家族・佐野家が、作品の舞台。車で夫の実家へお出かけしようとしているところに、泥棒の郷田が通りかかるところから物語がスタート。

元気よくドライブしていたところ、娘のみのりが荷物を見ると、宿題のドリルを忘れていたことに気づき、いったん家へと引き返します。

みのりは自分の荷物を取りに戻ったところ、泥棒を見つけたまでは良かったのですが、ベランダから転落し、すでに庭にいた泥棒がそれを受け止めたところぶつかったショックで、みのりと泥棒の身体が入れ替わってしまいました。

ただ、入れ替わってしまったものをそのままにはしておけないので、元に戻るまでの間は父・母・娘・泥棒の奇妙な四人暮らしをすることにした、不穏系ほのぼのコメディーです。

物語の見どころとしては、みんなにかわいがられて育ったみのりと、不遇な子供時代を経て大人になった泥棒・郷田との対比にあります。

みのりは、もともと天真爛漫さが魅力の女の子。それがいきなり中年泥棒の外見になってしまったので、沈んでいてもおかしくないところですが、やけにキャピキャピしています。

一方の泥棒・郷田は、小学生と入れ替わったので逃げ出すわけにもいかず、みのりの身体のまま、佐野家で同居。はからずも、みのりのかわりに小学校へと通うことに。

ただ、彼は子供の頃、不遇な環境に置かれており、みのりのように皆からかわいがられて育ったわけではありません。そのギャップが切なく感じました。

郷田自身にもさまざまな影があり、不穏な空気が漂う描写も見られます。

果たして、ふたりは無事に元に戻ることができるのか。

伝統あるコンテストで準大賞に輝いただけあり、画力も高くストーリーも面白いので、これからの展開が非常に楽しみな作品です。

【作品データ】
著者:山吹
出版社:講談社(モーニング・ツー)
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刊行状況:既刊1巻