数奇な運命の親子は幸せをつかめるのか?タイムリープサスペンス『卵と鶏』

「鶏が先か、卵が先か」という言葉があります。これは、哲学や科学でよく使われる、2つの関連する物事について原因を追求する意味で使われたり、矛盾する関係を示す意味で使われたりする言葉です(学研キッズネットより)。

子どもは男女がいなければ産まれてきませんし、どのように育つかは誰にもわかりません。さて、未来からタイムリープしてきた青年が現れ、突然親子関係を告白されたらすぐに受け入れられるのか。おそらく多くの人にとって、難しいし混乱するでしょう。奇妙な出会い方をした(自称)親子二人が、幸せを見つける物語として、辻やもり先生の『卵と鶏』を紹介します。

主人公は、26歳の鈴原鳴海。貧しく複雑な家庭で育った彼女は、現在は裕福だがDV傾向のある彼氏・加賀拓郎と都内の高級マンションで暮らしています。彼氏はお金持ちなので金銭面では充実している毎日ですが、心の方はどうにも満たされません。

そこに現れたのが、息子を名乗るもう一人の主人公・29歳の鈴原慶。未来からやってきたという彼に、鳴海は不信感を覚えます。令和6年(2024年)生まれで、出会ったのが令和5年(2023年)なので、怪しまれても無理はないですよね。

そのままおいていこうとも思ったものの、直後に放たれた「母さんは今、幸せですか?」という言葉に答えることができず……。その直後、DV彼氏に目撃され暴行されたことで、本当の気持ちに気づいた鳴海は「あなたとは別れる」といって逃げ出すのです。

そこから、数奇な親子の奇妙な同居生活が始まります。

物語の見どころは、この数奇な親子の行く末でしょう。DV彼氏は暴力を振るうだけでとんでもありませんが、鳴海の親もとんでもない存在です。何しろネグレクトを繰り返し、鳴海にだけ冷たい態度を取っており、それを見て妹の詩帆も苦しんでいます。

「幸せ」を探している鳴海と慶が、最終的にどこでその答えを見つけるのか。そして、産みの母を見つけられるのか。慶は、母親を最後まで守り切ることができるのか。

少し重ためな話ですが、テンポもよく絵柄もキレイにまとまっています。今後の展開が楽しみです。

【作品データ】
作者:辻やもり
出版社:芳文社(週刊漫画TIMES)
公式ページで第1話が試し読み可能
刊行状況:既刊1巻