現実のデータや実情に基づいた進路指導の物語『夢なし先生の進路指導』

「中学生もしくは高校生の頃の夢って何でしたか?」と質問されて、明確に答えられる人はいますか?その頃の夢がかなって生活できている人もいれば、夢破れて別のことをしている人、未だに諦めきれない人もいるでしょう。

実際に夢がかなっている人も、結局叶わずに別の仕事についた人、未だに諦めきれずにいる人も、ぜひ読んでもらいたい作品が、笠原真樹先生の『夢なし先生の進路指導』です。

【夢なし先生の進路指導とはどんな作品?】

物語の舞台は、栄森高等学校。主人公の高梨は、この学校で数学教師をしています。元キャリアコンサルタントで、この学校でも進路指導です。しかし、現実的なデータや世の中の実情を突きつけて、夢への覚悟を問います。

そのやり方から、生徒の間ではタイトルのとおり『夢なし先生の進路指導』と呼ばれています。

高梨がそのやり方を取っているのは、ある理由があります。それは「夢とは残酷なもので、夢は人を殺しかねない」という信念に基づいたものです。

実は、高梨本人も幼少期からピアノを習っており、幼い頃はプロのピアニストを目指していたほど。しかし、才能の差を感じたことでその夢を諦めてキャリアコンサルタントの資格を取り、現在は教師をしています。

本作に登場する生徒は、声優や電車運転士、メンズアイドル、保育士などの夢を持つ子、中にはまだ決まっていない、いわゆる「未定」の子などさまざまです。

各タイプの生徒に、全力で進路指導を行う姿が描かれています。

【作品の見どころ】

本作の見どころは、主人公の高梨が生徒のために全力で進路指導に当たり、夢のどん底から生徒を救っていくさまです。

さまざまな夢を持った生徒のために、全力で生徒指導を行う姿は、いくら仕事とはいえ本当に生徒のことを思っていないとなかなかできない行動でしょう。

とはいえ、夢に向かって一所懸命な高校生には、なかなか響きません。

それでは、それぞれの夢が叶うのかというと……。残念ながら夢を叶えて幸せになる人は少数で、多くは夢破れて挫折したり、一見叶ったように見えても、その実は理想と現実に悩んでいることがあります。

卒業後も元教え子のことを気にかけて、必要とあらばキャリアへのアドバイスをしたり、諦めるための最後の授業を施し、今後の支援をしているところは読み応えがあります。

夢の現実を描いているので、進路に悩んでいる高校生やその親御さんにおすすめしたい作品です。

【作品データ】
・作者:笠原真樹
・出版社:小学館(ビッグコミックスピリッツ)
ビッコミで閲覧可能
・刊行状況:既刊2巻