一人ひとりの悩みに向き合う女性用務員との心の触れ合いが暖かい『スクールバック』

「十人十色」という言葉があるように、人は顔が違うのはもちろんのこと、物事への考え方や思いもそれぞれ異なります。皆さんの中にも、若い頃に些細なことで友だちや親とケンカした経験のある方も多いでしょう。

特に高校年代は、子どもと大人の境界線上にいるため、大小さまざまな悩みを抱えているもの。親子とも、どのような距離感で接したらいいか悩んでいる方も多いと思います。そのような方に紹介したい作品が、小野寺こころ先生の『スクールバック』です。本作はサンデーうぇぶりにて、Webもしくはスマホアプリでお読みいただけます。

主人公は、とある高校で働く伏見直。缶コーヒーが好きな彼女の仕事は、用務員です。学校の備品管理・修理や設備の点検、書類仕事など、学校の雑務関係を一手に請負って、熱心に働いています。

そんな彼女が、いろいろな問題や悩みを持つ高校生に、優しくアドバイスをしていく物語です。

本作の魅力は、2つあります。

  • さまざまな葛藤を持った生徒の変化
  • 伏見さんが見せる優しさ

【さまざまな葛藤を持った生徒の変化】

作品内には、さまざまな悩み・葛藤を持った高校生が登場します。

  • 気丈に振る舞うあまり苦しくなる女子高生
  • ちょっとした言葉に敏感に反応してしまう
  • 周囲のノリについていけない
  • 悪い方向に考えて、自分でしんどくなってしまう

悩みの規模としては、少しモヤモヤする程度から、なかなか抜け出せなさそうな大きなものまでさまざまです。

悩んでいる当人としては、その葛藤の中で心が折れてしまうそうになります。そうなりそうなところで伏見さんが声をかけ、生徒目線のアドバイスをして、次の一歩を踏み出す手助けをしているのです。

生徒が苦しんでいるシーンも描かれているものの、最後は生徒自身が次の一歩を踏み出す姿や周囲の友だちと一緒に解決に向けて動き出す姿で終わっている点に好感が持てます。

【伏見さんが見せる優しさ】

高校生にとって、周囲にいる大人は親や先生くらいのもの。また、彼らの他に周りにいるのは、同級生や先輩・後輩が主な人たちです。このように考えると、高校生に見えている世界が、いかに狭いかがよくわかります。

高校生くらいになると、それぞれが持つ思いや考えを主張するので、なかなかうまく行かない場面も出てくるでしょう。

考えが伝わらずに苦しんでいるときにそっと現れ、生徒目線に立って共感したりアドバイスしたりした後、背中を押す行動をさり気なくしています。

その上で、先生などの大人に大切なことを気づかせ、周囲を見ている点も魅力的なキャラクターです。

「自分は大人だ」と思い込んでいる人に苦しめられている人はもちろん、どんなおとなになったらいいか迷っている人におすすめします。

【作品データ】
・作者:小野寺こころ
・出版社:小学館
サンデーうぇぶりで閲覧可能
・刊行状況:既刊2巻