『淡島百景』のレビュー記事はこちらからどうぞ
宝塚歌劇団をモチーフにした、架空の歌劇学校である淡島歌劇学校を舞台に、将来の舞台女優を目指す学生・卒業生・ファンを主人公として、その濃密な人間関係を描いた作品が『淡島百景』です。
作者の志村貴子先生のnoteでも書かれているとおり、本作は5巻で完結します。前身の「ぽこぽこ」で、2011年より連載が始まった本作。その最終章となる第29話が2023年11月27日に「Ohta Web Comic」のサイト上で再開されました。
【最終章のタイトル・あらすじ】
気になる最終章のタイトルは、「伊吹桂子と岡部絵美」です。
物語は、桂子が若かりし学生の頃、絵美をイジメているところの回想からスタート。
回想シーンが終わると、舞台は現代に戻ります。
桂子はすでに定年退職しており、現在は体調を崩して何回か目の入院中。
入院中の彼女を、フリーライターに転身した田畑若菜が見舞いに訪れます。
そんな若菜に問いかけます。
「あなたは淡島に入って、後悔したことがある?」と。
若菜が答えた後、「私は後悔ばかり。とり返しのつかないことをしたし、つぐなうこともできない」と返すのです。
その後、意を決したように「私がしたことをこれから話すので、できれば記事にしてほしい。可能であれば、本にもしてほしい」といい、岡部絵美に自らがしたイジメ行為について語りはじめるところで、最終章の第1幕が終わります。
ふたりの関係は、第1巻の第3話と第4話に書かれています。
- 第3話 岡部絵美と小野田幸恵
- 第4話 伊吹桂子と田畑若菜
第3話は、現時点(2023年12月22日執筆時点)で、無料公開されています。読んでみてください。
志村貴子先生の新刊、淡島百景④。
Wえりちゃんのエピソードが特に好き。世のボタンの、いつも微妙に掛け違いになるもどかしさよ!
絵莉ちゃんにとって最も素直な言葉である絵、素敵ですね。そして私、梅本先輩が好きです…。
「青い花」ファンの方もぜひぜひおともはMFのクレープアールグレイ。 pic.twitter.com/9UcQuJ6ImN
— 牧野天音 (@makinoamane) August 24, 2022
【イジメ・パワハラについて思うこと】
先にも書いたとおり、最終章は伊吹先生が岡部絵美さんに対して行った、イジメ行為の真実が詳らかにされる、物語の中でももっとも重たい章です。
筆者自身は、イジメる側にまわったこともあれば、イジメられる、パワハラを受ける側に回ったこともあります。
そのことを思い返しながら、今回の第29章を読み返しました。
その中で、思ったことは「イジメ・パワハラは大変にカッコ悪い行為である」ということです。
結局、する側に何らかのコンプレックスがあるから、そのはけ口として誰かをターゲットにしたイジメ・パワハラにつながります。
実際に本人に指摘したら「痛いところを突かれた」とでも言いたげな表情で怒り出したので、本当のことだったのでしょう。
それはさておき、印象に残ったのは、岡部絵美が伊吹桂子に唾を吐きかけた描写です。
桂子は「唾をかけられた時の顔は、さぞかし祖母に似ていたことだろう」と回想し、女優引退後は「岡部絵美のような生徒も、自分のような生徒も出さない」ことを心に誓い、淡島歌劇学校の教師になります。
モチーフになった宝塚歌劇団・宝塚音楽学校でもパワハラ事件が起き、現在問題になっているところです。
物語の最後が、どのように締めくくられるのかは誰にもわかりません。
物語の完結、および完結巻となる5巻の発売が今から楽しみです。
長らく積んでた「淡島百景」読んだらめちゃよかった
次の5巻で完結とのことだけど、いつごろになるんだろ志村貴子『淡島百景』特設サイト – 太田出版https://t.co/Z6YU0zHvgb
— Hagiwara (@tenkao) October 20, 2022
【作品データ】
・作者:志村貴子
・出版社:太田出版
※「Ohta Web Comic」で連載
・刊行状況:既刊4巻