バジリスク~甲賀忍法帖~(1) (アッパーズKC (197))

現代の漫画力で甦る、異能バトルの金字塔。『バジリスク~甲賀忍法帖~』

バジリスク~甲賀忍法帖~(1) (アッパーズKC (197)) 【あらすじ】
最後に勝つのは、甲賀卍谷か、伊賀鍔隠れか?反目し合う忍びの一族同士に、徳川家康から戦慄すべき密命が下った。「徳川の命運を賭けて殺し合え」――愛憎が交錯する忍者バトルが開幕。

【みどころ】
山田風太郎の代表作「忍法帖シリーズ」は、その奔放な想像力と、医学的知識に基づく緻密な裏付け、皮肉と情緒が巧みに盛り込まれた物語で、戦後の文壇に一大旋風を巻き起こしました。40作以上の既刊は、現在も各出版社で再販と復刊が繰り返され、時代を超えて多くの読者に愛されています。その記念すべき第1作『甲賀忍法帖』は、昭和33年に発表されました。

舞台は慶長19年・駿府城。女の黒髪を編んだ鞭の使い手・夜叉丸と、粘着質の唾液で戦う風待将監の御前試合から始まる物語の見所は、総勢20人の忍者が展開する壮絶なバトルに尽きると言ってよいでしょう。特異体質や特殊技能の持ち主たちが繰り広げる、豪快、奇妙、妖艶な死闘は「異能者同士の戦い」を扱う娯楽作品の始祖的存在として、多くのクリエーターに影響を与えたことでも有名です。もちろん、漫画界からのリスペクトも高く、コミカライズも何回かされてきましたが、その中でも『バジリスク~甲賀忍法帖~』は、原作の魅力を引き出すことに最も成功した作品といえます。

ゲームデザイナーの経歴を持つ作画担当のせがわまさき氏は、作中に登場する忍者20人のビジュアルを完璧、正確に再現するだけでなく、キャラクターの仕草や表情の端々に、独自の解釈からくる演出を入れました。現代の漫画家ならではの感性で、新しい命を与えられた忍者たちは、運命に翻弄される喜怒哀楽や葛藤を、より奥行きを持って読者に伝えられる結果になったのです。漫画の力で原作の良さを何倍にもふくらまされた本作は、アニメ化や講談社漫画賞受賞など高い評価を得ています。

あまりにもイメージが自由すぎるゆえに、「完全視覚化は不可能」と長らく言われていた忍法帖の世界。それがある漫画化の才能とCGを駆使した漫画によって見られるのは、何と幸せなことでしょうか。原作ファンには二度おいしく、知らない読者も十分に楽しめる本作。読んで置いて損はない作品です。

【作品データ】
・作者:山田風太郎 (原作), せがわまさき (漫画)
・出版社:講談社
・刊行状況:全5巻(完結)

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