行方が読めないのは人間も同じ!?気象を学べる人間模様が魅力の『BLUE MOMENT』

【あらすじ】
地震大国と言われている日本だが、異常気象は世界規模の問題だ。その気象を扱う漫画『BLUE MOMENT』が、雲研究者の荒木健太郎先生を監修に迎えた本格的な描写で非常に胸を打つと話題になっている。

【みどころ】
整えた外見や穏やかな物腰で「雲王子」と呼ばれて大人気の気象研究所の晴原の素顔は、「SDM」と呼ばれる内閣府直属の組織に属す職員。
過去に失ったものを胸に抱きつつ、一人でも災害で命を落とす人を減らしたいと考えている。
そこには二度と戻らない命の尊さを知った者の覚悟があった。

研究所に派遣社員の助手として配属されたのは雲田彩。
履歴書の詳細も見られず、名前がいいからというだけで晴原に選ばれた彼女は、帰国子女であるせいか気が強くまっすぐで、上司である晴原にも容赦なく楯突くおせっかい体質。
仕事ができすぎて以前の職場をクビになった経歴を持つほどのツワモノである。

随分年上で立場や学びのレベルも高い晴原に、しかし人間的な欠陥があると指摘できるのは彼女くらいだ。
メディアに出ない時は無愛想で口の悪い晴原に、彩は物怖じせず堂々とダメ出しをする。
相手をすることすら面倒だとさえ思っていたのに、いつしか晴原はそんな彩を信頼し仕事を任せ始める。

災害は突然起こるものだが、得てして上の人間は「何もなかった時」の心配ばかりをする。
多くの民間人に警告や避難を強いておいて、結局「何事もありませんでした」と謝罪することを避けているのだ。
何かあってからでは取り戻せない命なのに。何もないことこそ幸福であるのに。
そこに真正面から挑む晴原の姿や、人を救う知識はあるのに人との接し方が下手な彼に問題提起をする彩がいいコンビになっていて、専門的な知識も丁寧な説明があり読みやすい。

晴原が気象を突き詰めることになった真相や、彩のごく普通の前向きな言葉にハッとさせられる本作。気象は変えられないが、自分を変えれば救えるものもきっと増えるはずだ。

【作品データ】
・作者:小沢かな
・出版社:KADOKAWA
・刊行状況:1〜2巻(以下続刊)