天気予報は何のため?『BLUE MOMENT』で命に向き合う!

【あらすじ】
天気予報は何のためにあるのか、考えてみたことはあるだろうか?
楽しみにしている遠足のため?たまった洗濯物を乾かすため?
本作『BLUE MOMENT』は、災害から身を守るために天気予報に賭ける人々を描いている。

【みどころ】
仕事はできるのにおせっかいで無駄が嫌いな性格のせいで派遣先をクビになった雲田彩(くもた あや)。
一方で「雲王子」と呼ばれるイケメン気象予報士・晴原は、実は口が悪くて「バカめ」が口癖の嫌な奴。
そんな彼のもとで助手として働くことになった彩は、まったく興味のなかった気象という世界の幅広さにハマっていく。

本作は雲研究者の荒木健太郎先生が監修されていて、難しい用語も図解入りでわかりやすく説明されている。
「ブルーモーメント」というのは日の出前と日の入り後に見られる大気現象の一種で、辺り一面が真っ青になり非常に美しいという。
「夜が明けるのは当たり前だ」という晴原の言葉に、「朝が来るのは奇跡です」と返す彩。
お互い辛い過去を抱えているが、だからこそ誰も死なないために気象予報に注視する。

先日まで劇場公開されていた『ブルーサーマル』を始め、空の青さを突き詰めた作者は、青い空好きが高じて自家用操縦士(上級滑空機)の資格をとるほど。
『BLUE MOMENT』ではただのお天気解説だけではなく、悪天候による災害からいかに人を守るかという点が重視されている。

「警報を出しても、万一何もなかったら」など、自己保身に走る役所の職員などを一喝し、「万一のことがあったら責任がとれるのか」と問う。
口は悪いが誰よりも人命救助を考えている晴原の判断と行動に心奪われるだろう。
彩も晴原も、過去に大切な人を失った者同士だった。だからこそ、生きることに前向きな彩の言葉が身に沁みる。
災害の多い日本に住む以上、本作を通して改めて避難の大切さや家族の絆を考えてみて欲しい。

【作品データ】
・作者:小沢かな
・出版社:KADOKAWA
・刊行状況:1〜2巻(以下続刊)