コミュ障コンビが挑む『ハルシオン』はクライム・サスペンス!

【あらすじ】
第四東都帝国で、死傷者1000人を超える大規模爆破テロが発生したのは20年前のこと。
主犯格の黒水(クロウズ)の遺伝子解析をしたところ、ある特定の遺伝子が変異していることが判明した。
「KUGA(クガ)遺伝子」といい、手首に桜の刻印がなされた者たちは国の管理下におかれることになった。ある一人を除いて──。

【みどころ】
警視庁捜査一課の中にある第八強行犯捜査特異殺人事件捜査係・通称「第八」。
ここでは3つ以上の連続殺人事件が起こると操作権限が移される。
凶悪犯罪のデータベース「JACK」を作り上げたエリートの神藤(しんどう)が、何故か第八に入ることになった。

普段はぼーっとしていて何をするにも鈍くさい千木良陽斗(ちぎら ひなと)は、捜査一課数百名の中でナンバーワンだという。
神藤はそのカラクリを探るために投入されたのだった。

陽斗は殺人現場に行くと必ず一人になる時間をつくる。そこで不思議な異能力を使って犯人の行動を追体験するのだ。おかげで犯人逮捕が早い。
神藤はすぐに単独行動をする陽斗に辟易するが、手首に満開の桜の刻印を持つ、本来この職には就けないはずの陽斗の行動に興味を示す。

殺人事件を追いながら、陽斗の秘密にも迫っていく本作『ハルシオン』は、人間関係をうまく築けない不器用な二人がお互いに信頼できるようになるまでの物語でもある。
第八の仲間たちは陽斗を重宝しているが、KUGA遺伝子の証拠である桜が手首にあることを知っているのは、上位二名のみだ。

naked ape氏の描くおじさんはなかなかイカしていて、第八係長の星崎がいい。
神藤と陽斗のちぐはぐなコンビを楽しむ余裕と、人を見極める慧眼もある。
ピリピリした作品なので、時折星崎が現れることによって場を和やかにさせているとも言える。
コミュ障で不器用な二人の距離が縮まっていく様子を温かく見守りたい。

【作品データ】
・作者:naked ape
・出版社:一迅社
・刊行状況:全3巻