おとな百合でおすすめの2作品!『おとなになっても』と『定時にあがれたら』徹底比較

近年市民権を得つつある言葉が「LGBT」です。個々の性的少数者というより、包括的なコミュニティを示す言葉として用いられ、最近では「LGBTQ」や「LGBTQ+」などさまざまな呼び名で表現されています。

以前からBL(ボーイズラブ)作品を読む人はいましたが、最近では百合(いわゆるガールズラブ)の作品も増え、男女問わずこうした作品を好む人が多くなってきているようです。それにちなんで、おとな百合で人気のある『おとなになっても』と『定時であがれたら』を取り上げ、両者の比較とどのような人におすすめするかについて書いていきます。

■扱っているテーマ
『おとなになっても』(以下、『おとな』)と『定時であがれたら』(以下、『定時』)は、ともに成人女性による「おとな百合」というジャンルの作品です。しかし両者の内容は大きく異なります。

『おとな』は同性愛というテーマの他、不倫とそれによる心の動きを扱っている作品です。

一方、『定時』では同じ会社の異なる部署で働くふたりを主人公に、ふとしたきっかけでお互いの恋心に気づき、その気持ちを育んで中での心理をテーマにしています。

■主な個別テーマ

・『おとなになっても』
行きつけのバーで働いていた朱里に声をかけられた綾乃は、酔っ払って泊まった朱里の部屋でキスをされます。その後、お互いに気になる存在になるものの、綾乃ははじめての気持ちに戸惑い、朱里もまた綾乃への気持ちが止まりません。

既婚者の綾乃にとっては不倫ですが、なかなか別れてくれない夫や世間体を気にする姑に振り回される毎日。一方、朱里も環境の変化があるものの、二人の思いは止まらない。

揺れ動く、なかなかおとなになれない30代の女性ふたり。そんな彼女たちの気持ちをテーマにしています。

・『定時にあがれたら』
主人公は、同じ会社で働く企画部の水城さんと営業部の湯川さん。部署が違うので、すれ違うことはあってもなかなか逢うこともできない毎日です。そんな中、あるできごとがきっかけでゴハンに行くようになり、ふたりの心に恋心が芽生えてきます。

お互いに「好き」のひとことが言えないもどかしさ、嫉妬などの感情を抱えながら恋心を育む過程がテーマです。

■こんな人におすすめ
『おとな』はガールズラブとしての百合とともに、不倫の中で揺れ動く気持ちをテーマにしています。少しビターな百合マンガなので、少し背伸びしておとなの恋愛を覗いてみたい人、切ない恋愛が好きな人におすすめする作品です。

『定時』はピュアな百合をテーマにしているので、本当に胸がキュンキュンする感覚を味わえる作品です。人を好きになったときの心理状態が丁寧に描かれた作品なので、はじめて好きになった人のバイブルとしておすすめします。

【おとなになっても・作品データ】
・作者:志村貴子
・出版社:講談社(月刊KISS連載中)
・刊行状況:既刊5巻(以下続刊)

【定時にあがれたら・作品データ】
・作者:犬井あゆ
・出版社:祥伝社
・刊行状況:全4巻